義務教育は授業料が無償ですが、実際に子どもを小中学校へ通わせると、学用品・体操服・給食費・修学旅行費と、それなりの出費が続きます。この負担が家計にとって重いとき、市町村が費用の一部を援助する制度が就学援助です。

学校教育法第19条は「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」と定めています。文部科学省の調査によると、令和6年度に就学援助を受けた児童生徒は約117万人で、公立小中学校の児童生徒の13.36%にあたります。おおよそ7〜8人に1人という規模です。

ただし、この制度には大きな特徴があります。中身の多くを各市町村が独自に決めているという点です。この記事では、全国共通の枠組みと、自治体によって違う部分を切り分けて整理します。

この記事でわかること

  • 就学援助で援助される費目(学用品費から給食費・オンライン学習通信費まで)
  • 「要保護」と「準要保護」の違いと、対象になる収入の考え方
  • 認定基準が市町村ごとに違う、制度上の理由
  • 令和8年度に大きく引き上げられた新入学児童生徒学用品費等の単価
  • 入学前に受け取れる「入学前支給」と、申請のタイミング

高校段階の授業料支援は高等学校等就学支援金とは?令和8年度の新制度・支給額・申請の流れ、子育て世帯への現金給付は児童手当のしくみと受け取り方で扱っています。この記事は小中学校の就学費用の援助にしぼった内容です。

まず結論:申請先は「市町村(教育委員会)」です

項目内容
実施主体市町村(学校教育法第19条)
対象公立小中学校等に通う児童生徒の保護者
区分要保護(生活保護法上の要保護者)と準要保護(市町村が認定)
援助される費目学用品費・給食費・修学旅行費など14費目が国の補助対象
認定基準市町村ごとに異なる
申請先在籍校または市町村教育委員会

覚えておきたいのは、準要保護の認定基準・援助額・申請方法は市町村が決めるという点です。「隣の市では対象だったのに、引っ越したら対象外だった」ということが起こり得ます。ネットで見つけた他の自治体の基準をそのまま自分に当てはめないほうが安全です。

対象になる人:要保護と準要保護

要保護

生活保護法第6条第2項に規定する要保護者、つまり生活保護を必要とする状態にある方です。文部科学省によると、令和6年度で約7.8万人(公立小中学校の児童生徒の0.88%)が該当しています。

要保護者への援助については、国が市町村に対して要保護児童生徒援助費補助金として費用の2分の1を補助しています(令和8年度予算額5億円)。ここは全国共通の枠組みです。

準要保護

市町村教育委員会が「要保護者に準ずる程度に困窮している」と認めた方です。令和6年度で約109万人(同12.43%)と、就学援助を受けている人の大半がこちらにあたります。

ここが制度のわかりにくいところで、準要保護への就学援助には国の補助がありません。文部科学省は、いわゆる三位一体の改革により、平成17年度から国の補助を廃止し、税源移譲・地方財政措置に切り替えたと説明しています。つまり準要保護は各市町村が単独で実施する事業です。

自治体によって基準も金額も違うのは、運用が雑だからではなく、制度がそう設計されているからです。ここを理解しておくと、窓口で「うちの市の基準では」と言われたときに戸惑わずに済みます。

認定基準としてよく使われるもの

文部科学省の令和3年度就学援助実施状況調査によると、多くの市町村が複数の認定基準を設けており、主なものは次のとおりでした(複数回答・回答1,765市町村)。

認定基準採用している市町村
生活保護の基準額に一定の係数を掛けたもの1,328(75.2%)
児童扶養手当の支給を受けている1,308(74.1%)
生活保護の停止または廃止1,285(72.8%)
市町村民税の非課税1,281(72.6%)
市町村民税の減免1,067(60.5%)
国民健康保険料の減免または徴収の猶予1,063(60.2%)
国民年金保険料の免除1,060(60.1%)

同じ調査では、「生活保護の基準額に一定の係数を掛けたもの」を使う市町村のうち、1.2倍を超え1.3倍以下とする回答が726市町村(41.1%)で最も多く、次いで1.5倍以下が173市町村(9.8%)でした。

ここから読み取れるのは、児童扶養手当を受けている、住民税が非課税、国民年金保険料が免除されている——といった状態が、そのまま就学援助の入口になっている自治体が多いということです。児童扶養手当住民税非課税世帯に当てはまる方は、就学援助も同時に確認する価値があります。

なお、この調査結果は令和3年度時点のものです。最新の運用はお住まいの市町村にご確認ください。

援助される費目:14項目が国の補助対象

文部科学省が要保護児童生徒援助費補助金の対象としている費目は次のとおりです。準要保護についても、これらを参考に費目を設定している市町村が多くみられます。

  • 学用品費
  • 通学用品費(小中学校の第2学年以上)
  • 体育実技用具費(柔道着・剣道の防具一式・スキー用具・スケート靴など)
  • 新入学児童生徒学用品費等
  • 通学費
  • 修学旅行費
  • 校外活動費(宿泊を伴わないもの/伴うもの)
  • クラブ活動費
  • 生徒会費
  • PTA会費
  • 卒業アルバム代等
  • オンライン学習通信費(モバイルルーター等の購入・レンタル費用を含む)
  • 医療費(学校保健安全法施行令第8条に定める疾病の治療にかかるもの)
  • 学校給食費

要件が細かく決まっている費目もあります。たとえば通学費は、片道の通学距離が児童(小学生)で4km以上、生徒(中学生)で6km以上が対象で、豪雪地帯ではそれぞれ2km以上・3km以上に緩和されます。船舶を利用する児童や特別支援学級の児童生徒等は距離を問いません。修学旅行費は小学校・中学校を通じてそれぞれ1回限りです。

令和8年度:新入学児童生徒学用品費等の単価が上がりました

入学時にはランドセル・制服・体操服・上履きなどの支出が一度に発生します。これに対応するのが新入学児童生徒学用品費等です。文部科学省の令和8年度予算資料では、この費目の予算単価が引き上げられました。

区分令和7年度令和8年度差額
小学校57,060円64,300円+7,240円
中学校63,000円81,000円+18,000円

中学校は1万8,000円の引上げで、制服代の上昇などが反映された形です。

参考までに、他の費目の予算単価がどの程度の水準かを示すと、令和3年度は次のようになっていました(同年度の要保護児童生徒援助費補助金予算単価)。

費目小学校中学校
学用品費11,630円22,730円
新入学児童生徒学用品費等51,060円60,000円
通学費40,020円80,880円
修学旅行費22,690円60,910円

これらは国の補助金の予算単価であって、各市町村が実際に支給する金額そのものではありません。ただし同じ令和3年度の調査では、学用品費について小中とも約1,500市町村が、国の予算単価と同額以上の単価を設定していました。国の単価は、実務上の目安として機能しているといえます。

手続き:申請しないと始まりません

申請の窓口と時期

就学援助は、保護者が申請して認定を受ける制度です。学校や教育委員会が自動的に判断して支給してくれるものではありません。

令和3年度の調査では、申請書の提出方法として「希望者が学校に提出」が821市町村(46.5%)で最も多く、次いで「希望者が学校もしくは教育委員会に提出」が611市町村(34.6%)でした。申請の有無にかかわらず全世帯に用紙を配って提出を求める自治体も一部あります。

申請期間については、「随時申請を受け付けており、締切を過ぎた申請の場合は申請月や認定月以降分から援助」が1,535市町村(87.0%)と大多数でした。つまり、年度の途中でも申請自体はできることが多い一方、さかのぼって援助を受けられるとは限らないということです。家計の状況が変わったら早めに相談するのが現実的です。

入学前に受け取れる場合があります

新入学児童生徒学用品費等については、入学後ではなく入学前に支給する自治体が多数派になっています。令和3年度の調査では、令和3年度入学者に入学前支給を実施済みと回答した市町村が、小学校で1,477市町村(83.7%)、中学校で1,502市町村(85.1%)でした。

小学校入学予定者への周知は、教育委員会のウェブサイト掲載(643市町村)、就学時健康診断での案内配布(604市町村)、広報誌への掲載(582市町村)などが上位でした。入学の前年の秋ごろに動きがあると考えて、就学時健康診断や入学説明会の配布物に目を通しておくと取りこぼしを防げます。

家計が急に変わったとき

失業・離婚・病気などで年度途中に収入が大きく減ることがあります。令和3年度の調査では、家計急変世帯について「従前から家計急変世帯の認定を行っている」「新たに認定基準を整備した」「相談があった場合に個別対応」と回答した市町村が合わせて1,456市町村(82.5%)でした。

前年の所得だけで機械的に判断されるとは限りません。状況が変わったら、まず学校か教育委員会に相談することをおすすめします。

注意点:思い込みで判断しないために

  • 認定基準は市町村ごとに違います。他の自治体の「年収◯◯万円まで」という情報は参考になりません
  • 援助される費目も市町村ごとに違います。国の補助対象14費目のすべてを実施しているとは限りません
  • 金額も市町村が決めます。国の予算単価は目安であり、実費支給・上限額・定額のいずれで支給するかも自治体によって異なります
  • 申請しないと始まりません。所得が下がっても自動では認定されません
  • さかのぼり支給は限定的です。多くの自治体では申請月または認定月以降が対象になります
  • 私立小中学校に通う場合の扱いも自治体によって異なります。在籍校の所在地ではなく、お住まいの市町村の教育委員会が窓口です

なお、生活保護を受けている世帯では、学用品費や通学費は生活保護の教育扶助から支給されるため、就学援助の補助対象から除かれる費目があります。どちらの制度から支給されるのかは、福祉事務所と教育委員会に確認するのが確実です。

よくある質問

Q1. 共働きですが対象になりますか。

A. 就学援助の判定は世帯の所得等でみるのが一般的で、共働きかどうかで一律に決まるものではありません。多くの自治体が生活保護基準額に一定の係数を掛けた額や、住民税の課税状況を基準にしています。基準額は世帯人数や年齢構成でも変わるため、お住まいの市町村の基準表でご確認ください。

Q2. 申請すると学校や周囲に知られてしまいませんか。

A. 申請書の提出先は自治体によって学校の場合と教育委員会の場合があります。取り扱いに不安がある場合は、教育委員会へ直接提出できるかどうかを事前に問い合わせる方法があります。実際に、提出先を選べる運用をしている自治体もあります。

Q3. 年度の途中で申請してもいいですか。

A. 令和3年度の調査では、87.0%の市町村が随時申請を受け付けていると回答しています。ただし、締切を過ぎた申請では申請月や認定月以降分からの援助になることが多いため、早めの相談が有利です。

Q4. 引っ越したら手続きは引き継がれますか。

A. 就学援助は市町村ごとの制度です。転出先で改めて申請が必要になるのが一般的で、認定基準も変わる可能性があります。転居が決まったら、転入先の教育委員会に確認してください。引っ越しに伴う手続き全般は引っ越しのときの役所手続きまとめで扱っています。

Q5. 高校生の子どもがいる場合も就学援助の対象ですか。

A. 就学援助は義務教育段階(小学校・中学校)の制度です。高校段階については高等学校等就学支援金や高校生等奨学給付金など別の制度が用意されています。詳しくは高等学校等就学支援金とは?をご覧ください。

まとめ

  • 就学援助は、経済的理由で就学が困難な小中学生の保護者に、市町村が学用品費・給食費などを援助する制度です
  • 令和6年度の利用は約117万人、公立小中学校の児童生徒の13.36%にあたります
  • 要保護は国が費用の2分の1を補助、準要保護は平成17年度から市町村の単独事業です。自治体差が生まれるのはこの構造によります
  • 国の補助対象は14費目。オンライン学習通信費も含まれます
  • 令和8年度の新入学児童生徒学用品費等の予算単価は小学校64,300円・中学校81,000円に引き上げられました
  • 認定基準は市町村ごと。生活保護基準額の1.2倍超1.3倍以下を使う自治体が最多でした(令和3年度調査)
  • 入学前支給を実施する市町村は小学校83.7%・中学校85.1%(令和3年度入学者)
  • 申請しなければ始まりません。多くの自治体で随時申請は可能ですが、さかのぼり支給は限定的です
  • 最新情報は文部科学省「就学援助制度について(就学援助ポータルサイト)」とお住まいの市町村の公式サイトで必ずご確認ください

まず確認したいのは、①お住まいの市町村の認定基準と申請書の提出先、②今年度の申請締切と随時申請の可否、③新入学児童生徒学用品費等の入学前支給の有無、の3点です。学校からの配布物と市町村教育委員会のウェブサイトに、ほぼ答えが載っています。

迷ったときの問い合わせ先

  • 認定基準・申請書の入手・提出先:お住まいの市区町村の教育委員会(学務課・学校教育課など)
  • 在籍校での手続き:お子さんが通う小中学校
  • 生活保護との関係:お住まいの地域を担当する福祉事務所
  • 家計全体の見直し:市区町村の生活困窮者自立相談支援窓口

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参考資料

最終確認日

最終確認日: 2026-08-30

本サイトは公的機関ではありません。準要保護の認定基準・援助費目・支給額・申請方法は市町村ごとに異なり、年度によっても変わります。記事中の調査結果は文部科学省が公表した時点のものです。ご自身が対象になるかどうかの判断は、お住まいの市区町村の教育委員会でご確認ください。