離婚や死別などで父母の一方と生計を同じくしていない子どもを育てているとき、国の制度として支給されるのが「児童扶養手当」です。子育て世帯に広く支給される児童手当とは別の制度で、所得に応じて金額が変わり、毎年8月の現況届が必要になるなど、手続きの作法も異なります。

令和8年1月に2025年の全国消費者物価指数の実績値が公表されたことを受けて、令和8年4月分から手当額が改定されました。児童1人の全部支給は月額48,050円で、前年度の46,690円から1,360円の増額です。

この記事では、児童扶養手当の対象・金額・所得制限・手続きを、こども家庭庁の公式資料と市区町村の案内をもとに整理しました。

この記事でわかること

  • 令和8年4月分からの手当額(全部支給・一部支給・第2子以降の加算)
  • 対象になる人と、対象にならないケース
  • 所得制限限度額の早見表(収入ベースと所得ベース)
  • 一部支給額を自分で計算する手順と、3つの試算例
  • 養育費の8割が所得に加算されるしくみ
  • 5年経過後の「一部支給停止」と、それを避けるための届出

子育て世帯に広く支給される手当については児童手当のしくみ 支給額・申請・現況届、医療費の負担軽減については子ども医療費助成とは?で扱っています。この記事はひとり親家庭等が対象の児童扶養手当にしぼった内容です。

まず結論:令和8年4月分からの手当額

区分令和8年4月分から令和7年4月〜令和8年3月分
児童1人・全部支給48,050円46,690円
児童1人・一部支給11,340円〜48,040円11,010円〜46,680円
第2子以降1人につき・全部支給11,350円11,030円
第2子以降1人につき・一部支給5,680円〜11,340円5,520円〜11,020円

一部支給は所得額に応じて10円きざみで決まります。第3子以降の加算額は、令和6年11月分から第2子と同額に引き上げられており、令和8年度も同じ扱いです。

支給は年6回、1月・3月・5月・7月・9月・11月で、支給月の前月までの2か月分がまとめて振り込まれます。振込日は各支給月の11日(休日にあたる場合はその前日)とする市区町村が一般的です。

なお、障害のある児童を養育している場合に支給される「特別児童扶養手当」も、同じタイミングで改定されています(令和8年4月分から1級58,450円・2級38,930円)。児童扶養手当とは別の制度で、要件を満たせば両方を受け取れる場合があります。

対象になる人

こども家庭庁の資料によると、支給対象者は「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護する母等」とされています。

支給要件として挙げられているのは次のようなケースです。

  • 父母が婚姻を解消した児童
  • 父または母が死亡した児童
  • 父または母が一定程度の障害の状態にある児童
  • 父または母の生死が明らかでない児童 など

父子家庭も対象です(平成22年8月から支給対象に加わりました)。令和7年3月時点の受給者数は777,962人で、内訳は母738,913人・父35,915人・養育者3,134人とされています。

対象にならない・支給が止まるケース

次のような場合は、支給要件に該当しなくなるとされています。

  • 児童や請求者が日本国内に住所を有しないとき
  • 児童が里親に委託されたとき、児童福祉施設等に入所したとき
  • 請求者が婚姻したとき(事実婚を含みます
  • 父または母の配偶者に養育されているとき

とくに注意したいのが事実婚の扱いです。札幌市の案内では、原則として同居していることが要件とされる一方、同居していなくても頻繁に定期的な訪問があり、かつ定期的に生活費の援助を受けていれば該当する場合があるとされています。届出をしないまま受給を続けると、手当の返還を求められることがあります。

所得制限限度額の早見表

児童扶養手当には所得制限があります。こども家庭庁が公表している令和6年11月分からの限度額は次のとおりです(令和8年度も同じ額です)。

受給資格者本人の限度額

扶養する児童等の数全部支給・収入ベース全部支給・所得ベース一部支給・収入ベース一部支給・所得ベース
0人142.0万円69万円334.3万円208万円
1人190.0万円107万円385.0万円246万円
2人244.3万円145万円432.5万円284万円
3人298.6万円183万円480.0万円322万円
4人352.9万円221万円527.5万円360万円
5人401.3万円259万円575.0万円398万円

収入ベースの額は目安で、実際の判定は所得ベースで行われます。所得額が「全部支給の限度額」未満なら全部支給、それ以上「一部支給の限度額」未満なら一部支給、それ以上なら全額が支給停止です。

扶養義務者等の限度額

同居している扶養義務者(直系血族および兄弟姉妹)がいる場合は、その方の所得も判定されます。所得ベースで扶養親族等0人236万円・1人274万円・2人312万円・3人350万円(以降1人につき38万円加算)で、この限度額以上だと請求者の所得にかかわらず全額支給停止になるとされています。

実家に戻って親と同居しているケースでこの規定に該当することがあるため、同居の有無は申請時に確認されます。

所得額の出し方と試算

所得額の計算手順

岡山市・川崎市の案内をもとに整理すると、判定に使う所得額は次のように計算します。

所得額 = 前年の所得(給与のみの方は源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」)
        + 受け取った養育費の8割相当額
        - 10万円(給与所得・公的年金等に係る雑所得がある場合)
        - 8万円(社会保険料相当額・全員一律)
        - 障害者控除・医療費控除などの各種控除

押さえておきたい点が3つあります。

  • 養育費の8割が所得に加算されます。 元配偶者から受け取っている養育費は、請求者が父または母の場合、8割相当額を所得に足して判定します
  • 社会保険料は実額ではなく一律8万円の控除です
  • ひとり親控除(35万円)は本人には使えません。 岡山市の案内では、ひとり親控除・寡婦控除の対象は「養育者と扶養義務者のみ」とされています。所得税・住民税での扱いとは異なる点に注意が必要です(税の扱いは扶養控除の金額はいくら?をご覧ください)

また、判定に使う所得はその年度によって対象年が変わります。川崎市の案内では、11月分から翌年10月分までがその年度にあたり、前年(1月から9月までの請求は前々年)の所得で判定するとされています。つまり令和8年4月分から10月分までは令和6年中の所得、令和8年11月分からは令和7年中の所得で判定されます。

一部支給額の計算式(令和8年4月分から)

1人目の月額 = 48,040円 -{(所得額 - 全部支給の所得制限限度額)× 0.0264029}
2人目以降の加算月額 = 11,340円 -{(所得額 - 全部支給の所得制限限度額)× 0.0040719}
※{}内は10円未満を四捨五入

係数は物価の変動などにあわせて毎年改定されるため、年度が変わったら数字を確認し直す必要があります。

実際にいくらになるか(3つの試算)

例①:子1人・給与収入200万円・養育費なし

給与所得控除後の金額 = 1,320,000円
所得額 = 1,320,000 - 100,000 - 80,000 = 1,140,000円
全部支給の限度額(扶養1人)1,070,000円を上回るため一部支給
1人目 = 48,040 -(1,140,000 - 1,070,000)× 0.0264029
      = 48,040 - 1,850 = 46,190円/月

年額にすると約554,000円です。全部支給との差は月1,860円で、限度額を少し超えただけなら減り方は緩やかだとわかります。

例②:子2人・給与収入250万円・養育費月3万円

給与所得控除後の金額 = 1,670,000円
養育費の8割 = 360,000 × 0.8 = 288,000円
所得額 = 1,670,000 + 288,000 - 100,000 - 80,000 = 1,778,000円
全部支給の限度額(扶養2人)1,450,000円を上回るため一部支給
1人目 = 48,040 - 328,000 × 0.0264029 = 48,040 - 8,660 = 39,380円
2人目 = 11,340 - 328,000 × 0.0040719 = 11,340 - 1,340 = 10,000円
合計 49,380円/月(2か月ごとに98,760円)

養育費を加算しなければ所得額は1,490,000円で、1人目46,980円・2人目11,180円の合計58,160円でした。つまり養育費の8割加算によって手当が月8,780円ほど減る計算です。ただし受け取る養育費は月30,000円なので、差し引きでは月21,220円のプラスになります。手当が減ることを理由に養育費を受け取らない・申告しないという判断は、金額面でも合理的とはいえません。

例③:子1人・給与収入150万円

給与所得控除後の金額 = 950,000円
所得額 = 950,000 - 100,000 - 80,000 = 770,000円
全部支給の限度額 1,070,000円 未満のため全部支給
48,050円/月(年576,600円)

いずれも給与収入のみで、他の控除がない場合の目安です。実際の額は市区町村が計算します。

手続きの流れ

申請

お住まいの市区町村(都道府県・市・福祉事務所設置町村が実施主体)の窓口で認定請求を行います。手当は認定請求をした日の属する月の翌月分から支給され、さかのぼっての支給はありません。要件に該当したら早めに相談するのが基本です。

一般的に必要とされる書類は次のとおりです。

  • 認定請求書
  • 請求者と対象児童の戸籍謄本(離婚の記載があるもの)
  • 養育費に関する申告書
  • 請求者名義の預金通帳
  • マイナンバーが確認できる書類、本人確認書類

なお、戸籍法の改正により、児童扶養手当の認定手続では申請書とあわせてマイナンバーを提示することで、戸籍証明書等の添付が不要になる取り扱いが導入されています。必要書類は市区町村で異なるため、事前に確認してください。

毎年8月の現況届

受給資格の認定を受けた方は、毎年8月に現況届の提出が必要です。川崎市の案内では、現況届が提出されないと11月以降の手当を受けられず、2年間未提出の場合は受給資格がなくなるとされています。

5年経過後の「一部支給停止」に注意

父または母である受給資格者の手当は、次のいずれかに当たると2分の1が支給停止になるとされています。

  • 支給開始月の初日から5年を経過したとき
  • 支給要件に該当した月の初日から7年を経過したとき
  • 認定請求時に3歳未満の児童を監護していた場合は、その児童が3歳に達した日の属する月の翌月の初日から5年を経過したとき

ただし、就労している方、求職など自立に向けた活動をしている方、障害や疾病で就労が困難な方などは、「一部支給停止適用除外事由届出書」を提出することで減額されません。多くの市区町村では、7月から8月にかけて現況届に同封して案内されます。

この届出は、対象になる方にとっては手当が半分になるかどうかを分ける重要な書類です。届いた封筒を開かないままにしないよう気をつけたいところです。

年金や他の手当との関係

公的年金等との併給調整

遺族年金や障害年金などの公的年金等を受け取っている場合、その月額が児童扶養手当の月額より低ければ、差額分を児童扶養手当として受け取れます

障害基礎年金等を受給している方については、令和3年3月分の手当から取り扱いが見直され、年金全体ではなく子の加算部分と児童扶養手当を比較して差額を支給するしくみになりました。あわせて、この方たちについては非課税の公的年金給付等を含めて所得を算出することとされています。

遺族年金・障害年金のしくみは遺族年金とは?障害年金とは?で解説しています。

児童手当との関係

児童手当は所得にかかわらず子育て世帯に支給される別の制度で、児童扶養手当と両方を受け取ることができます。高校生年代の子どもがいる場合は高等学校等就学支援金も対象になり得ます。制度ごとに窓口や申請時期が異なるため、市区町村のひとり親家庭支援の窓口でまとめて相談するのが効率的です。

注意点

  • 手当額は毎年見直される可能性があります。 全国消費者物価指数の実績値にあわせて改定されるため、翌年度の額は年明けに公表されます
  • 一部支給の計算式の係数も毎年変わります。 前年の記事や資料の数字をそのまま当てはめないようご注意ください
  • 所得の判定年は年度の途中で切り替わります。 令和8年10月分までと11月分以降で判定に使う年が異なります
  • 令和7年分から給与所得控除の最低保障額が引き上げられています。 これにより同じ収入でも所得額の計算結果が変わり、令和8年11月分以降の判定に影響する可能性があります。実際の取り扱いは市区町村にご確認ください
  • 実施主体は市区町村です。 必要書類・面談の有無・振込日などの運用には地域差があります
  • 不正受給には罰則があります。 事実婚の状態にありながら届け出ない、養育費を申告しないなどの場合、手当の返還に加えて法律上の罰則の対象になり得るとされています

よくある質問

Q1. 離婚が成立していなくても受け取れますか。

A. 支給要件は「父母が婚姻を解消した児童」などと定められており、離婚が成立していない別居中は原則として対象外です。ただし、配偶者からの暴力(DV)被害を理由に保護命令が出されている場合など、平成24年8月から支給要件に加わったケースもあります。事情によって扱いが異なるため、お住まいの市区町村のひとり親支援担当窓口にご相談ください。

Q2. 働き始めて収入が増えたら、すぐ手当は止まりますか。

A. 手当の判定は前年(時期によっては前々年)の所得で行うため、収入が増えてもその年度の手当額はすぐには変わりません。翌年度の判定から反映されます。逆に、収入が減った場合も手当が増えるのは翌年度からになります。急な事情がある場合は、災害による特例など個別の制度がないか窓口で確認してみてください。

Q3. 養育費を受け取ると損になりますか。

A. 養育費の8割相当額が所得に加算されるため、手当額が減ることはあります。ただし、試算例②のとおり、減る手当額よりも受け取る養育費のほうが大きくなるのが通常です。養育費を申告しないことは不正受給にあたるおそれがあるため、受け取っている場合は申告してください。

Q4. 元夫(元妻)が手当を受け取っていますが、私も申請できますか。

A. 児童扶養手当は同じ児童について重複して支給されません。実際に児童を監護している方が受給資格者になります。監護の状況が変わったときは、双方が市区町村へ届け出る必要があります。

Q5. 現況届を出し忘れました。どうすればよいですか。

A. まずは市区町村の窓口にすぐ連絡してください。現況届は8月中の提出が原則ですが、期限を過ぎても提出すれば支給が再開される取り扱いが一般的です。ただし2年間提出がないと受給資格そのものが失われるとされているため、放置は避けてください。

まとめ

  • 令和8年4月分から、児童1人の全部支給は月額48,050円(前年度から1,360円の増額)
  • 第2子以降の加算は1人につき11,350円(全部支給)。第3子以降も同額です
  • 所得制限は、扶養1人なら全部支給が所得107万円(収入190万円)、一部支給が所得246万円(収入385万円)が目安
  • 一部支給は「48,040円 -(所得額 - 全部支給限度額)× 0.0264029」で10円きざみに決まります
  • 養育費の8割が所得に加算され、社会保険料は一律8万円の控除です
  • 支給は年6回(1・3・5・7・9・11月)。毎年8月の現況届が必須です
  • 支給開始から5年(または要件該当から7年)で2分の1が支給停止。就労等の届出で回避できます
  • 最新情報はこども家庭庁「児童扶養手当について」とお住まいの市区町村の公式サイトで必ずご確認ください

まずは源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を手元に用意し、早見表の所得ベースの数字と見比べてみてください。限度額の近くにいる場合は、市区町村の窓口で正確な試算をしてもらうのが確実です。

迷ったときの問い合わせ先

  • 申請・現況届・手当額の試算:お住まいの市区町村のこども関連課・ひとり親家庭支援担当窓口
  • 制度全般:こども家庭庁支援局家庭福祉課
  • 年金との併給調整:年金事務所(年金額の確認)と市区町村(手当側の判定)
  • 養育費の取り決め・相談:養育費等相談支援センター、法テラス

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参考資料

最終確認日

最終確認日: 2026-08-22

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