給付金や医療費の軽減の案内でよく見かける「住民税非課税世帯」。名前は聞くけれど、自分が当てはまるのかどうかは分かりにくい言葉です。

住民税非課税世帯とは、住民票上の世帯全員に住民税の均等割がかからない世帯を指します。判定に使うのは「年収」ではなく「前年の合計所得金額」で、しかも基準となる金額は住んでいる市区町村によって変わります。ここが分かりにくさの正体です。

この記事では、令和8年度の判定基準と、給与収入・年金収入に置き換えるといくらになるのかを、東京都主税局と市区町村の公式情報をもとに整理しました。

この記事でわかること

  • 「住民税非課税世帯」の正確な意味と、判定に使う3つのパターン
  • 級地区分(1級地・2級地・3級地)で基準額が変わるしくみ
  • 給与収入・年金収入に置き換えた非課税ラインの目安(令和8年度)
  • 「均等割非課税」と「所得割非課税」の違い
  • 非課税世帯になると変わる医療費・保険料・教育費の負担
  • 遺族年金や障害年金がある場合の考え方

住民税そのもののしくみ(所得割・均等割・納付時期)については、住民税とは?いつ・いくら払うのかを初心者向けに解説をあわせてご覧ください。この記事は、そのうち「かからない側」の判定基準にしぼって解説しています。

まず結論

項目内容
意味住民票上の世帯全員が住民税の均等割非課税である世帯
判定に使う金額前年(1〜12月)の合計所得金額(年収ではありません)
判定の時点その年の1月1日現在に住んでいる市区町村
基準額市区町村の級地区分で変わる(1級地35万円・2級地31万5千円・3級地28万円が基本単位)
単身の目安(1級地)合計所得45万円以下 = 給与収入なら110万円以下
判定する人お住まいの市区町村(申請は不要で、課税・非課税は自動的に決まります)

大事なのは、「世帯の合計収入」で見るのではないという点です。世帯員一人ひとりについて非課税かどうかを判定し、全員が非課税のときに「非課税世帯」になります。世帯に一人でも均等割がかかる人がいれば、その世帯は非課税世帯には該当しません。

住民税がかからない3つのパターン

東京都主税局の説明によると、所得割・均等割がともに非課税になるのは次のいずれかに当てはまる場合です。

#パターン内容
生活保護生活保護法による生活扶助を受けている方
属性+所得障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下(給与収入なら204万4千円未満)
所得のみ前年の合計所得金額が、市区町村の条例で定める額以下の方

②は所得の水準にかかわらず属性で判定されるため、給与収入204万4千円未満であれば、単身であっても非課税になります。ひとり親世帯や障害のある方の世帯では、③の基準より広く非課税になり得るという点が重要です。

大半の方に関係するのは③です。ここからは③の計算方法を見ていきます。

基準額は住んでいる市区町村で変わる(級地区分)

③の「条例で定める額」は全国一律ではありません。生活保護法の級地区分に準じて、次の3段階に分かれています。

級地1人あたりの基準額扶養親族等がいる場合の加算
1級地(東京23区・多くの政令指定都市など)35万円21万円
2級地31万5千円18万9千円
3級地28万円16万8千円

計算式は次のとおりです。

均等割の非課税限度額
= 級地の基準額 ×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の合計人数)+ 10万円
 (同一生計配偶者または扶養親族がいる場合は、さらに級地ごとの加算額を足す)

東京都主税局は東京23区の基準として「35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下」(扶養等がいない場合は45万円以下)と案内しています。これは上の式の「35万円+10万円+21万円」を整理したものです。

自分の市区町村が何級地かは、市区町村の公式サイトの個人住民税ページに書かれていることが多く、たとえば千葉県柏市は自らを2級地と明示しています。同じ収入・同じ家族構成でも、隣の市に引っ越すと課税・非課税が変わることがあるという点は、あらかじめ知っておくと混乱しません。

実際にいくらになるか(計算してみる)

合計所得金額のままでは実感しにくいので、給与収入と年金収入に置き換えてみます。令和8年度の住民税は令和7年(2025年)1〜12月の所得で判定されるため、給与所得控除は令和7年分のもの(最低保障65万円)を使います。

給与収入だけの場合(令和8年度・1級地)

世帯の人数(本人+同一生計配偶者+扶養親族)合計所得の限度額給与収入の目安
1人(単身)45万円110万円以下
2人(夫婦のみなど)101万円166万円以下
3人(夫婦+子1人)136万円約205万9千円以下
4人(夫婦+子2人)171万円約255万9千円以下

給与収入だけの場合(令和8年度・2級地)

世帯の人数合計所得の限度額給与収入の目安
1人41万5千円106万5千円以下
2人91万9千円156万9千円以下
3人123万4千円188万4千円以下
4人154万9千円約232万7千円以下

2級地の数値は柏市が公表している早見表と一致します。同じ4人世帯でも、1級地と2級地では給与収入の目安に約23万円の差が出る計算です。

公的年金だけの場合(1級地・65歳以上)

65歳以上の方は公的年金等控除が110万円(年金収入330万円以下の場合)なので、次のようになります。

世帯の人数合計所得の限度額年金収入の目安
1人45万円155万円以下
2人(夫婦)101万円211万円以下
3人136万円246万円以下

65歳未満は公的年金等控除が60万円(年金収入130万円以下)となるため、同じ年金額でも判定が変わります。65歳の誕生日を境に非課税・課税が入れ替わることがあるのは、この控除額の違いによるものです。

上の表はいずれも給与または年金だけの収入を前提にした目安です。副業収入や不動産所得、株の配当を申告している場合などは合計所得金額が変わります。正確な判定は、お住まいの市区町村の税務担当課でご確認ください。

「均等割非課税」と「所得割非課税」は別もの

住民税には所得割(前年の所得に応じて課税)と均等割(定額)の2つがあり、非課税の基準もそれぞれ別に定められています。

区分基準地域差
均等割の非課税級地ごとの基準額×人数+10万円(+加算)あり(級地で異なる)
所得割の非課税35万円×人数+10万円(扶養等がいる場合は+32万円)なし(全国共通)

「住民税非課税世帯」と呼ばれるのは、均等割まで非課税の世帯です。所得割だけが非課税で均等割(年5,000円が目安)はかかる、という中間の状態があり、この場合は非課税世帯には該当しません。

所得割だけが非課税になる給与収入の目安(全国共通)は次のとおりです。

世帯の人数合計所得の限度額給与収入の目安
1人45万円110万円以下
2人112万円177万円以下
3人147万円約221万6千円以下
4人182万円約271万6千円以下

「住民税の通知が届いたけれど金額が5,000円だった」というときは、この所得割非課税に当たっているケースが多いようです。所得割と均等割の関係は所得税と住民税の違いをわかりやすく解説でも整理しています。

非課税世帯になると変わること

住民税が非課税になると、住民税そのものの負担がなくなるだけでなく、他の制度の負担にも影響します。主なものを挙げます。

分野内容
医療費高額療養費の自己負担限度額が最も低い区分(住民税非課税者)になります
入院時の食事代「限度額適用・標準負担額減額認定証」の対象になり、食事療養費の標準負担額が下がります
介護保険料第1号被保険者の保険料段階が低い段階になります(段階と金額は市区町村ごと)
高校の教育費高校生等奨学給付金(授業料以外の費用)の対象になります
大学等の学費高等教育の修学支援新制度(授業料等減免・給付型奨学金)の対象になり得ます
臨時の給付金物価高対策などの給付金で、対象要件として使われることがあります

医療費の上限については高額療養費、どう使う?事前認定証・マイナ保険証・事後申請の判断ガイド限度額適用認定証とは?入院前の窓口立て替えを防ぐ方法、高校の授業料支援については高等学校等就学支援金とは?令和8年度の新制度・支給額・申請の流れで詳しく扱っています。

なお、国民健康保険料の7割・5割・2割軽減は「非課税世帯かどうか」ではなく、独自の所得基準で判定されます。基準が似ているため混同されやすいところです。詳しくは国民健康保険料はどう決まる?所得割・均等割・平等割のしくみと7割・5割・2割軽減をご覧ください。

見落としやすいポイント

遺族年金・障害年金は合計所得に入りません

遺族年金や障害年金は、法律上、所得税・住民税がかからない非課税所得とされています。したがってこれらの年金をいくら受け取っていても、合計所得金額には含まれません。老齢年金だけが課税対象です。

そのため、遺族年金で生活している世帯が住民税非課税世帯に該当することは珍しくありません。遺族年金のしくみは遺族年金とは?遺族基礎年金・遺族厚生年金の対象と金額の計算で解説しています。

判定は住民票の「世帯」単位です

非課税世帯かどうかは、住民票上で同じ世帯になっている人全員で判定されます。同居していても世帯を分けていれば別世帯として扱われ、逆に別居していても住民票の世帯が同じであれば同一世帯です。

ただし、世帯分離は本来の生活実態に基づいて行う住民異動の手続きであり、給付金の対象になることを目的とした届出を推奨するものではありません。転居・世帯変更の手続き自体は引っ越しのときの役所手続きまとめで扱っています。

所得税が0円でも住民税がかかることがあります

所得税の基礎控除は令和7年分から所得に応じて58万〜95万円になりましたが、住民税の基礎控除は43万円のまま据え置かれています。控除額が小さい分、所得税がかからない収入でも住民税はかかる、という逆転が起こります。「所得税0円=非課税世帯」ではない、と押さえておくと誤解が減ります。

判定は毎年やり直されます

住民税は前年の所得で毎年計算し直されるため、去年は非課税世帯でも今年は課税、ということが起こります。給付金などで「基準日時点で非課税世帯であること」と条件が付くのは、この年ごとの変動があるためです。

令和9年度からは基準が動く見込みです

給与所得控除の最低保障額は、個人住民税では令和9年度分から69万円に引き上げられ、さらに令和9年度・令和10年度は5万円を加算する特例が設けられると財務省の令和8年度税制改正の資料に示されています。柏市も令和9年度・令和10年度の早見表を別に掲載しており、単身の均等割非課税ラインが給与収入106万5千円から115万5千円(同市=2級地の場合)に上がる見込みとしています。令和9年度以降は目安が変わるため、この記事の表は令和8年度のものとしてご覧ください。

よくある質問

Q1. 自分が非課税世帯かどうかは、どこで確認できますか。

A. 毎年5〜6月ごろに届く住民税の通知書(給与から天引きの方は「特別徴収税額の決定通知書」、それ以外の方は「納税通知書」)で確認できます。非課税の場合は通知そのものが届かないことが多いため、市区町村の税務担当課で「非課税証明書」(課税・非課税を証明する書類)を取得すると確実です。給付金の申請で提出を求められることもあります。

Q2. 収入が「103万円以下」なら非課税世帯ですか。

A. 103万円という数字は所得税の話として使われてきたもので、住民税の非課税判定とは基準が別です。単身・1級地の場合、住民税の均等割が非課税になる給与収入の目安は令和8年度で110万円以下です。また扶養の考え方も別の制度なので、扶養の壁、どこで働き方を決める?とあわせて整理することをおすすめします。

Q3. 世帯の中に学生の子どもがいてアルバイト収入があります。影響しますか。

A. 非課税世帯かどうかは世帯員それぞれについて判定し、全員が均等割非課税である必要があります。したがって、子ども本人の収入が基準を超えて均等割が課税されると、その世帯は非課税世帯に該当しなくなる場合があります。未成年者については合計所得135万円以下なら非課税という別の規定もあるため、年齢によって扱いが変わります。

Q4. 途中で引っ越したら、どの市区町村の基準で判定されますか。

A. 住民税はその年の1月1日現在に住んでいた市区町村が課税します。年の途中で引っ越しても、その年度の住民税は1月1日時点の市区町村の基準で判定され、そこへ納めることになります。級地が違う市区町村へ引っ越した場合、判定が変わるのは翌年度からです。

Q5. 非課税世帯になるための手続きは必要ですか。

A. 課税・非課税は市区町村が所得情報にもとづいて判定するため、非課税にするための申請はありません。ただし、収入がなく確定申告も年末調整もしていない場合、市区町村が所得を把握できず「未申告」の扱いになり、各種軽減や証明書の発行に支障が出ることがあります。収入がなかった年も市区町村への申告(住民税の申告)が必要とされている場合があるため、お住まいの市区町村にご確認ください。

まとめ

  • 住民税非課税世帯とは、住民票上の世帯全員が住民税均等割非課税である世帯のこと
  • 判定に使うのは前年の合計所得金額で、年収そのものではない
  • 均等割の基準額は級地区分で変わり、1級地は35万円×人数+10万円(+扶養等がいれば21万円)
  • 単身・1級地の目安は給与収入110万円以下/65歳以上の年金収入155万円以下(令和8年度)
  • 所得割だけが非課税の状態は非課税世帯には当たらない(均等割の年5,000円程度がかかる)
  • 遺族年金・障害年金は非課税所得なので、合計所得金額には含まれない
  • 令和9年度以降は給与所得控除の見直しで目安が変わる見込み
  • 最新情報は東京都主税局「個人住民税」およびお住まいの市区町村の公式サイトで必ずご確認ください

自分の世帯が該当するかを確かめたいときは、市区町村の税務担当課に「非課税証明書が発行できる状態か」を尋ねるのがいちばん早い方法です。複雑な所得がある場合の判定は、税理士など専門家にご相談ください。

迷ったときの問い合わせ先

  • 課税・非課税の判定、証明書の発行:お住まいの市区町村の市民税・町民税担当課
  • 級地区分の確認:市区町村の個人住民税のページ、または税務担当課
  • 医療費の自己負担限度額:加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険)
  • 介護保険料の段階:市区町村の介護保険担当課
  • 奨学給付金・修学支援新制度:都道府県の担当窓口、学校、日本学生支援機構
  • 確定申告や所得の判定:所轄の税務署、税理士

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参考資料

最終確認日

最終確認日: 2026-08-16

本サイトは公的機関ではありません。均等割の非課税限度額は市区町村の条例で定められており、級地区分によって金額が異なります。また税制改正により基準が変わることがあります。ご自身の判定は、本文中の公式リンクやお住まいの市区町村の税務担当課で最新の内容をご確認ください。