年金というと「老後に受け取るもの」というイメージが強いかもしれません。ただ、公的年金にはもうひとつの顔があります。病気やけがによって生活や仕事に制限が出たときに、現役世代でも受け取れる「障害年金」です。
日本年金機構によると、障害年金の対象となるのは手足の障害などの外部障害だけではなく、統合失調症・双極性障害・発達障害などの精神障害、心疾患・腎疾患・糖尿病・がんなどの内部障害も含まれるとされています。「障害者手帳を持っていないから関係ない」と考えて確認しないままになっているケースもある制度です。
この記事では、障害年金の対象・等級・金額・手続きを、日本年金機構の公式情報をもとに整理しました。
この記事でわかること
- 障害基礎年金と障害厚生年金の違い
- 対象になるための3つの要件(初診日・障害の程度・保険料納付)
- 1級・2級・3級と障害手当金の考え方
- 令和8年度の金額と、モデルケースでの具体的な計算
- 請求手続きの流れと、傷病手当金・遺族年金との違い
まず結論
障害年金の全体像は次のとおりです。
| 項目 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
|---|---|---|
| どの制度から | 国民年金 | 厚生年金 |
| 初診日の時点で | 国民年金加入中・20歳前など | 厚生年金加入中 |
| 等級 | 1級・2級 | 1級・2級・3級 |
| 金額(令和8年度) | 2級847,300円/1級1,059,125円 | 報酬比例の年金額がベース |
| 上乗せ | 子の加算 | 配偶者の加給年金額 |
| 軽い障害が残ったとき | ― | 障害手当金(一時金) |
ポイントは、初診日にどの年金制度に入っていたかで受け取れる年金が変わるという点です。会社員・公務員として厚生年金に加入している間に初診日があり、1級・2級に該当する場合は、障害厚生年金と障害基礎年金の両方を受け取れる場合があります。
制度の土台となる違いは厚生年金と国民年金の違いもあわせてご覧ください。
傷病手当金・遺族年金との違い
似た場面で使われる制度と混同しやすいため、役割の違いを整理しておきます。
| 制度 | どこから | いつの生活を支えるか |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 健康保険 | 病気・けがで働けない期間(通算1年6か月まで) |
| 障害年金 | 国民年金・厚生年金 | 障害の状態が続いている間 |
| 遺族年金 | 国民年金・厚生年金 | 加入者が亡くなったあとの遺族の生活 |
会社員の場合、休職中はまず傷病手当金で生活を支え、障害の状態が続くようであれば障害年金の請求を検討する、という流れになることがあります。ご家族が亡くなった場合の制度は遺族年金で整理しています。
対象になる人(3つの要件)
日本年金機構によると、障害年金を受け取るには次の3つをすべて満たす必要があるとされています。
1. 初診日要件
初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいうとされています。
- 障害基礎年金:国民年金の加入期間、または20歳前・60歳以上65歳未満で国内に住所があり年金制度に加入していない期間に初診日があること
- 障害厚生年金:厚生年金保険の被保険者である間に初診日があること
初診日を証明する書類が用意できない場合でも、一定の書類によって初診日が認められる場合があるとされています。判断が難しいため、年金事務所にご相談ください。
2. 障害の程度の要件(障害認定日)
障害認定日とは、初診日から1年6か月を過ぎた日、または1年6か月以内にその病気やけがが治った(症状が固定した)場合はその日をいうとされています。人工透析・人工関節・心臓ペースメーカーなど、これより前の日が障害認定日になる取り扱いもあります。
この日に、障害等級表の等級に該当していることが要件とされています。
| 等級 | 状態の考え方(障害等級表より) |
|---|---|
| 1級 | 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度 |
| 2級 | 日常生活が著しい制限を受ける、または著しい制限を加えることを必要とする程度 |
| 3級 | 労働が著しい制限を受ける、または著しい制限を加えることを必要とする程度(厚生年金のみ) |
障害認定日に該当しなかった場合でも、その後症状が悪化して等級に該当したときは「事後重症による請求」ができるとされています。この場合は請求日の翌月分からの支給となり、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があるとされています。
3. 保険料納付要件
初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることが必要とされています。
ただし、初診日が令和18年3月末日までで、初診日において65歳未満の場合は、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいという特例があるとされています。
保険料を納められないときに未納のまま放置せず国民年金の免除・納付猶予を申請しておくことが、この納付要件の面でも意味を持ちます。なお、20歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われないとされています。
いくら受け取れるか(令和8年度の金額)
年金額は毎年4月に改定されます。以下は令和8年(2026年)4月分からの金額です。
障害基礎年金
| 等級 | 年金額(昭和31年4月2日以後生まれ) | 昭和31年4月1日以前生まれ |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円 | 1,056,125円 |
| 2級 | 847,300円 | 844,900円 |
1級は2級の1.25倍とされています。さらに、生計を維持されている子がいる場合は子の加算額があります。
- 子2人目まで:1人につき243,800円
- 子3人目から:1人につき81,300円
ここでいう「子」は、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子とされています。
障害厚生年金
| 等級 | 計算 |
|---|---|
| 1級 | 報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者の加給年金額(243,800円) |
| 2級 | 報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(243,800円) |
| 3級 | 報酬比例の年金額(最低保障額635,500円) |
| 障害手当金 | 報酬比例の年金額 × 2 の一時金(最低保障額1,271,000円) |
報酬比例の年金額は、おおまかに次のように計算されるとされています(平成15年4月以後の加入期間の場合)。
平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 × 加入期間の月数
加入期間の合計が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算されるとされています。若いうちに障害の状態になった場合でも、一定の水準が確保されるしくみです。配偶者の加給年金額は、65歳未満の配偶者がいる場合に加算されるとされています。
計算例:会社員・2級・子1人・配偶者ありのケース
平均標準報酬額30万円、厚生年金の加入期間が300月未満、障害等級2級、生計を維持している子が1人、65歳未満の配偶者がいる場合で計算してみます。
- 報酬比例の年金額:300,000 × 5.481 ÷ 1000 × 300月 = 493,290円
- 障害厚生年金2級:493,290円 + 配偶者加給年金243,800円 = 737,090円
- 障害基礎年金2級:847,300円 + 子の加算243,800円 = 1,091,100円
- 合計:年1,828,190円(月あたり約15万2,000円)
同じ条件で1級に該当する場合は、報酬比例部分が1.25倍(約616,600円)、障害基礎年金が1,059,125円となり、合計はおよそ年216万円(月あたり約18万円)という計算になります。
計算例:3級のケース
同じく平均標準報酬額30万円で、障害等級3級に該当した場合はどうなるでしょうか。3級は障害厚生年金のみで、障害基礎年金や子の加算はありません。
報酬比例の年金額は493,290円ですが、3級には最低保障額635,500円があるため、この場合は635,500円(月あたり約5万3,000円)が支給額の目安になります。報酬比例の計算結果が最低保障額を下回るときは最低保障額が適用される、という点が3級の特徴です。
障害年金生活者支援給付金
障害基礎年金を受けている方で、前年所得が一定額以下の場合、上乗せとして年金生活者支援給付金が支給される場合があるとされています。令和8年度の額は、1級が月額7,025円、2級が月額5,620円です。
手続きの流れ
ステップ1:相談・要件の確認
初診日を確認したうえで、年金事務所・街角の年金相談センター、または市区町村役場に相談します。保険料の納付要件と必要書類をここで確認します。
ステップ2:書類をそろえる
日本年金機構によると、主な必要書類は次のとおりとされています。
- 年金請求書
- 医師の診断書(障害認定日から3か月以内の現症のもの)
- 受診状況等証明書(初診の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合)
- 病歴・就労状況等申立書
- 戸籍謄本・住民票など(マイナンバーの登録により省略できる場合があります)
- 受取先金融機関の通帳等のコピー
子がいる場合や、第三者の行為が原因の場合は、追加の書類が必要とされています。
ステップ3:提出先へ請求する
| 初診日の状況 | 提出先 |
|---|---|
| 国民年金加入中に初診日がある方など | お住まいの市区町村役場 |
| 20歳前に初診日がある方 | 年金事務所・街角の年金相談センター |
| 厚生年金加入中に初診日がある方 | 年金事務所・街角の年金相談センター |
初診日の時点で共済組合等に加入していた場合は、その共済組合等が窓口になるとされています。
ステップ4:決定・振込
年金請求書の提出から3か月程度で「年金証書」「年金決定通知書」が届くとされています。障害の状態を詳しく確認する必要がある場合は、さらに時間がかかることもあります。年金証書が届いてから約1〜2か月後に振込が始まり、以後は偶数月に2か月分が振り込まれます。受け取れない場合は不支給決定通知書が送付されます。
注意点
- 年金額は毎年4月に改定されます。この記事の金額は令和8年度のものです
- 障害認定日から5年以上前の年金は、時効により受け取れないとされています
- 20歳前の傷病による障害基礎年金には所得制限があり、扶養親族がいない場合、前年所得が4,794,000円を超えると全額、3,761,000円を超えると2分の1が支給停止とされています
- 同一の病気やけがで障害厚生年金をさかのぼって受給できることになった場合、すでに受給した傷病手当金が調整されることがあるとされています。加入している健康保険の保険者にご確認ください
- 労災保険の障害給付との間でも調整が行われる場合があります
- 老齢年金の繰上げ受給を請求すると、その後は障害年金を請求できなくなるとされています
- 受給後も「障害状態確認届(診断書)」の提出が必要になる年があり、障害の状態によって等級や支給が見直される場合があります
よくある質問(FAQ)
Q1. 障害者手帳を持っていないと請求できませんか? A. 障害者手帳の等級と、障害年金の等級は別の基準です。手帳の有無にかかわらず、要件を満たせば請求できるとされています。逆に手帳があっても障害年金の等級に該当しない場合もあります。
Q2. うつ病や発達障害も対象になりますか? A. 日本年金機構は、障害年金の対象となる病気やけがとして統合失調症・双極性障害・てんかん・知的障害・発達障害などの精神障害を挙げています。個別に該当するかは診断書等をもとに認定されるため、年金事務所にご相談ください。
Q3. 働きながらでも受け取れますか? A. 就労していることだけを理由に一律に対象外となるわけではないとされています。ただし障害の状態の認定にあたって日常生活や就労の状況が考慮されるため、等級判定に影響する場合があります。
Q4. 初診日から1年6か月経つ前に請求できますか? A. 原則として障害認定日を迎える必要があります。ただし人工透析・人工関節・ペースメーカーの装着など、1年6か月より前が障害認定日となる取り扱いがあるとされています。
Q5. 3級だと障害基礎年金はもらえないのですか? A. 障害基礎年金は1級・2級のみとされているため、3級は障害厚生年金のみとなります。ただし3級には最低保障額635,500円(令和8年度)が設けられています。
まとめ
- 障害年金は、病気やけがで生活や仕事に制限が出たときに現役世代でも受け取れる公的年金
- 対象になるには「初診日」「障害の程度」「保険料納付」の3要件を満たす必要がある
- 令和8年度の障害基礎年金は2級847,300円・1級1,059,125円。子の加算は2人目まで各243,800円
- 障害厚生年金は報酬比例の年金額がベースで、300月未満は300月とみなして計算される
- 平均標準報酬額30万円・2級・子1人・配偶者ありのケースでは、合計で年約182万円(月約15万2,000円)という計算になる
- 年金額は毎年4月に改定されるため、請求する時点の金額を公式サイトで確認する
- 最新情報は日本年金機構「障害年金」で必ずご確認ください
障害年金は、初診日の特定や診断書の内容によって結果が変わることがあり、要件も細かく定められています。ご自身が対象になるかどうかの判断は、年金事務所・街角の年金相談センター、または社会保険労務士にご相談ください。
迷ったときの問い合わせ先
- 障害年金の要件・請求手続き:お近くの年金事務所、街角の年金相談センター、ねんきんダイヤル
- 国民年金加入中に初診日がある場合の請求窓口:お住まいの市区町村役場の国民年金担当窓口
- 傷病手当金との調整:加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)
- 請求書類の作成で迷うとき:社会保険労務士
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参考資料
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」(PDF)
- 日本年金機構「障害等級表」
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
最終確認日
最終確認日: 2026-08-01
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