75歳の誕生日を迎えると、それまで入っていた健康保険や国民健康保険から離れ、「後期高齢者医療制度」に移ります。手続きは原則として必要ありませんが、保険料の計算方法も、医療機関の窓口で払う割合の決まり方も、それまでとは別のルールになります。

しかも令和8年度は変化の大きい年です。保険料率が2年に一度の改定期にあたり、全国平均で月額7,989円と前回より578円上がる見込みが公表されました。さらに、令和7年9月末で「2割負担の配慮措置」が終わり、令和8年4月からは保険料に「子ども・子育て支援金」の分が加わっています。

この記事では、後期高齢者医療制度のしくみを、厚生労働省の公表資料や各都道府県の広域連合の案内をもとに整理しました。

この記事でわかること

  • 誰が、いつから後期高齢者医療制度の対象になるか
  • 令和8・9年度の保険料率と、都道府県によってどのくらい差があるか
  • 自分の保険料をざっくり計算する手順(軽減措置の判定を含む)
  • 窓口負担が1割・2割・3割のどれになるかの判定フロー
  • 令和7年9月30日で終わった「配慮措置」で何が変わったか
  • 令和8年度から加わった「子ども・子育て支援金」分の位置づけ

現役世代の健康保険については健康保険とは?会社員が加入する公的医療保険の基本、国民健康保険の保険料については国民健康保険料の計算方法と軽減制度で扱っています。この記事は75歳以降の医療保険にしぼった内容です。

まず結論:3つのポイント

論点結論
対象75歳以上の方全員(65〜74歳で一定の障害の状態にあると広域連合の認定を受けた方を含む)
加入手続き原則不要。75歳の誕生日当日から自動的に移ります
保険料均等割額+所得割額を個人単位で計算。令和8・9年度の全国平均は月額7,989円
保険料率都道府県の広域連合が2年ごとに決めるため、地域差があります
窓口負担1割・2割・3割の3段階。世帯単位で判定します
令和8年度の変更医療分の賦課限度額が80万円→85万円。子ども・子育て支援金の分が新たに加わりました

会社の健康保険や国民健康保険は世帯単位で保険料を計算する場面が多いのに対し、後期高齢者医療制度は一人ひとりに保険料がかかるのが大きな違いです。夫婦とも75歳以上なら、2人分の保険料をそれぞれ負担することになります。

対象になる人と、加入のタイミング

75歳になった日から自動的に

75歳の誕生日を迎えると、その日から後期高齢者医療制度の被保険者になります。それまで加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)や国民健康保険、後期高齢者医療以外の制度からは、同じ日に資格を失います。

加入のための申請は原則として不要で、誕生日の前月ごろに広域連合または市区町村から資格確認書などが送られてくるのが一般的です。マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合は、そのまま使えます。

65〜74歳でも対象になる場合があります

65歳以上75歳未満の方でも、一定の障害の状態にあると広域連合から認定を受けた場合は、後期高齢者医療制度の被保険者になれるとされています。この場合は本人の申請にもとづく認定で、撤回することもできるとされています。

障害の状態の目安は、障害年金の1級・2級や身体障害者手帳1〜3級(4級の一部を含む)などです。詳しい要件は広域連合ごとに案内されているため、障害年金とは?対象になる状態・等級・金額とあわせて、お住まいの広域連合にご確認ください。

扶養に入っていた方は注意が必要です

これまで子どもの健康保険の被扶養者だった方は、被扶養者には保険料の負担がありませんでした。しかし後期高齢者医療制度に移ると、本人に保険料がかかります

この負担増をやわらげるため、加入する日の前日に被用者保険の被扶養者だった方については、栃木県後期高齢者医療広域連合の案内によると、所得割額の負担がなく、均等割額も資格取得から2年間は5割軽減されるとされています。所得の低い方への軽減にも該当する場合は、高いほうの軽減割合が適用されます。

令和8・9年度の保険料率

厚生労働省は令和8年4月10日、各広域連合の議会で決まった令和8・9年度の保険料率をとりまとめて公表しました。

全国平均の数字

項目令和6・7年度令和8・9年度
被保険者均等割額(年額)50,389円56,083円
所得割率10.21%10.17%
一人当たり平均保険料額(月額)7,411円7,989円
一人当たり平均保険料額(年額)88,940円95,875円

厚生労働省は、平均保険料額が578円(7.8%)増加する見込みだとしています。所得割率はわずかに下がっているものの、均等割額が5,694円上がったことが全体を押し上げています。

なお、この平均額は各広域連合が条例を改正したときの見込額であり、実際に一人ひとりに課される保険料の平均とは異なるとされています。

都道府県で2倍以上の差があります

保険料率は都道府県の広域連合ごとに決まるため、地域差があります。公表資料から、一人当たり平均保険料額(月額・令和8・9年度の見込み)の上位・下位を並べると次のとおりです。

高いほうから月額低いほうから月額
東京都10,352円青森県4,990円
神奈川県9,842円岩手県5,496円
愛知県9,045円福島県5,744円
大阪府9,010円秋田県5,847円
沖縄県8,731円新潟県5,852円

最も高い東京都と最も低い青森県では、月額で2倍以上の開きがあります。これは所得水準や医療費の水準が地域で異なるためで、引っ越しで都道府県をまたぐと保険料が変わる点は知っておきたいところです。

また、全国平均は上がりましたが、青森県と山梨県は前回より下がる見込みです(青森県5,126円→4,990円、山梨県7,320円→7,070円)。均等割額を据え置いた鳥取県のような例もあり、「全国で一律に上がる」わけではありません。

保険料を自分で計算してみる

計算式

保険料は次の式で計算します。

年間保険料 = 均等割額 + 所得割額
所得割額 =(前年の総所得金額等 - 基礎控除43万円)× 所得割率

基礎控除は合計所得金額2,400万円以下で43万円、2,400万円超2,450万円以下で29万円、2,450万円超2,500万円以下で15万円、2,500万円超はゼロとされています(栃木県広域連合の案内による)。端数は100円未満を切り捨てるのが一般的です。

均等割額の軽減判定

所得の低い方は均等割額が軽減されます。栃木県広域連合の案内によると、同一世帯内の被保険者と世帯主の総所得金額等の合計額をもとに、次の基準で判定されます。

軽減割合判定基準(世帯の総所得金額等の合計)
7割軽減43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)以下
5割軽減上記+31万円×被保険者数以下
2割軽減上記+57万円×被保険者数以下

判定するときは、65歳以上の公的年金受給者は年金所得から15万円を差し引いた額を使うとされています。なお令和8年度については、医療分のみ7割軽減にさらに0.2割を上乗せする(7.2割軽減とする)取り扱いを行っている広域連合があります。

実際にいくらになるか(全国平均の率で試算)

例①:単身・年金収入180万円のみ(65歳以上)

年金所得 = 180万円 - 110万円(公的年金等控除)= 70万円
所得割額 =(70万円 - 43万円)× 10.17% = 27,459円
軽減判定の所得 = 70万円 - 15万円 = 55万円
  → 43万円+31万円=74万円以下なので 5割軽減
均等割額 = 56,083円 × 50% = 28,041円
年間保険料(医療分)≒ 55,500円(月あたり約4,600円)

例②:単身・年金収入84万円のみ

厚生労働省の公表資料では、基礎年金受給者(年金収入84万円)の令和8・9年度の保険料は全国平均で月額1,309円とされています。均等割の7割軽減に加え、さらに0.2割を軽減できる取り扱いを反映した数字です。年金収入が公的年金等控除の範囲内であれば所得割はかからず、均等割の軽減後の額だけになります。

例③:賦課限度額に達する場合

令和8年度の医療分の賦課限度額は85万円(前年度80万円から5万円引上げ)です。これに子ども・子育て支援金分の限度額21,000円が加わります。所得が高い方でも、年間保険料はこの上限で頭打ちになります。

いずれも全国平均の率で計算した目安です。実際の保険料は、お住まいの都道府県の広域連合の率で計算されます。

令和8年度から加わった「子ども・子育て支援金」分

令和8年4月1日から子ども・子育て支援金制度が始まり、後期高齢者医療の保険料にも「子ども分」が加わりました。こどもや子育て世帯を社会全体で支えるため、高齢者を含むすべての世代や企業が拠出するという考え方にもとづくものです。

厚生労働省が公表した令和8年度の子ども分の全国平均は次のとおりです。

項目令和8年度(全国平均)
被保険者均等割額(年額)1,351円
所得割率0.25%
一人当たり平均保険料額(年額)2,333円(月額194円)

医療分と比べればわずかな額ですが、保険料の通知書に新しい項目が増えるため、「見慣れない欄がある」と戸惑うかもしれません。なお、子ども・子育て支援金制度は令和8年度から令和10年度にかけて段階的に構築されるため、令和9年度の子ども分の保険料率は令和8年度末までに各広域連合の議会で決められるとされています。

窓口負担は1割・2割・3割のどれか

判定フロー

医療機関の窓口で払う割合は、世帯単位で判定されます。厚生労働省の資料にもとづくと、流れは次のとおりです。

① 現役並み所得者(課税所得145万円以上)に該当するか
    → 該当する:世帯全員 3割

② 世帯内の75歳以上の方等のうち、課税所得28万円以上の方がいるか
    → いない:世帯全員 1割

③ 世帯に75歳以上の方等が何人いるか
   ・単身:「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上 → 2割/未満 → 1割
   ・2人以上:世帯合計が320万円以上 → 世帯全員 2割/未満 → 世帯全員 1割

ここでいう「課税所得」は住民税納税通知書の「課税標準」の額で、前年の収入から給与所得控除や公的年金等控除、基礎控除・社会保険料控除などを差し引いた後の金額です。また「年金収入」に遺族年金・障害年金は含まれません。

住民税非課税世帯の方は1割負担になるとされています(住民税非課税世帯とは?基準と受けられる支援もあわせてご覧ください)。

なお現役並み所得者に該当する場合でも、一定の基準・要件を満たすときは申請により1割または2割になるケースがあるとされています。

「配慮措置」は令和7年9月30日で終わりました

令和4年10月に2割負担が導入されたとき、外来医療の1か月の負担増加額を3,000円までに抑える配慮措置が設けられていました。この措置は令和7年9月30日で終了しています。

時期2割負担の方の外来窓口
令和4年10月〜令和7年9月1か月の負担増を3,000円までに抑える上限あり・超過分は後日払い戻し
令和7年10月〜上限なし。原則どおり2割を負担

たとえば1か月の外来医療費が50,000円の場合、配慮措置があったときは1割負担時(5,000円)からの増加分5,000円のうち3,000円までに抑えられ、2,000円が払い戻されていました。現在はこの払い戻しがなくなっています。

自己負担が重くなったときの備えとして、高額療養費制度のしくみ限度額適用認定証とは?を確認しておくと安心です。

保険料の納め方

保険料の納め方は2種類あります。

方法対象内容
特別徴収受給している年金額が年額18万円以上の方年金からの天引き
普通徴収それ以外の方納付書または口座振替で納付

介護保険料と同様のしくみで、介護保険料と後期高齢者医療保険料の合計が年金額の2分の1を超える場合などは、特別徴収の対象外となり普通徴収になるとされています。

特別徴収の対象であっても、申し出により口座振替に変更できる取り扱いが一般的です。口座振替にすると、世帯の中で納付する人を変えられるため、社会保険料控除を誰が受けるかの扱いが変わることがあります。判断に迷う場合は市区町村の担当窓口へご確認ください。

注意点

  • 保険料率は2年ごとに、住んでいる都道府県で決まります。 全国平均の数字はあくまで目安で、実際の額はお住まいの広域連合の率によります
  • 賦課限度額は令和8年度に引き上げられました。 医療分は80万円から85万円になり、これに子ども分の21,000円が加わります
  • 軽減判定は世帯単位です。 本人の所得が低くても、世帯主や同じ世帯の被保険者に所得があれば軽減に該当しないことがあります
  • 窓口負担の判定も世帯単位です。 夫婦のうち一方の所得によって、2人とも2割負担になることがあります
  • 年度の途中で75歳になった方は、月割りの保険料になります。 前の制度で払った保険料との重複がないか、通知書で確認しておくと安心です
  • 個別の判定は広域連合・市区町村へ。 障害認定による加入や、現役並み所得者の基準収入額適用申請などは個別判断になります

よくある質問

Q1. 75歳になったら、何か手続きが必要ですか。

A. 原則として加入手続きは不要で、誕生日当日から自動的に後期高齢者医療制度の被保険者になります。誕生日の前月ごろに資格確認書などが届くのが一般的です。ただし、それまで加入していた健康保険の資格喪失にともなう手続き(保険証等の返却など)が必要になる場合があります。勤務先の健康保険に入っている方は、勤務先の担当部署にご確認ください。

Q2. 夫婦とも75歳以上です。保険料は世帯で1つですか。

A. 後期高齢者医療制度の保険料は個人単位で計算されるため、それぞれに保険料がかかります。一方で、均等割額の軽減判定や窓口負担割合の判定は世帯単位で行われます。「保険料の計算は個人・軽減や負担割合の判定は世帯」と整理しておくと混乱しにくくなります。

Q3. 会社の健康保険に加入し続けることはできますか。

A. 後期高齢者医療制度の被保険者になると、健康保険や国民健康保険の被保険者・被扶養者ではなくなるとされています。75歳以降も働いていて厚生年金保険に加入している場合でも、医療保険は後期高齢者医療制度になります(在職中の年金については在職老齢年金のしくみをご覧ください)。

Q4. 保険料が払えないときはどうすればよいですか。

A. まずはお住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口に相談してください。災害・失業・事業の休廃止などの事情がある場合は、保険料の減免や徴収猶予の制度が設けられていることがあります。連絡しないまま滞納すると、資格確認書の有効期限が短くなるなどの取り扱いを受けることがあるため、早めの相談が大切です。

Q5. 引っ越すと保険料は変わりますか。

A. 同じ都道府県内での引っ越しであれば保険料率は変わりませんが、都道府県をまたぐ場合は転入先の広域連合の率で計算されます。前掲のとおり地域差が大きいため、変わる可能性があります。転出・転入の手続きは通常の住民異動と同時に行います(引っ越しのときの役所手続きまとめ)。

まとめ

  • 75歳になると自動的に後期高齢者医療制度へ移り、申請は原則不要です
  • 保険料は個人単位で、均等割額+所得割額。令和8・9年度の全国平均は月額7,989円(前回比578円増)
  • 保険料率は都道府県ごと。東京都10,352円と青森県4,990円のように2倍以上の差があります
  • 令和8年度から医療分の賦課限度額が85万円になり、子ども・子育て支援金の分(全国平均で年2,333円)が加わりました
  • 窓口負担は1割・2割・3割。判定は世帯単位で、課税所得28万円と年金収入200万円/320万円が分かれ目です
  • 2割負担の配慮措置は令和7年9月30日で終了。現在は上限や払い戻しがありません
  • 最新情報は厚生労働省「高齢者医療制度」やお住まいの都道府県の広域連合の公式サイトで必ずご確認ください

保険料の通知書が届いたら、均等割額・所得割額・軽減割合の3点を確認してみてください。思っていた金額と違うときは、軽減の判定に使われた世帯の所得を市区町村の窓口で確かめるのが近道です。

迷ったときの問い合わせ先

  • 保険料の額・軽減・納め方:お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当窓口
  • 保険料率・制度全般:お住まいの都道府県の後期高齢者医療広域連合
  • 窓口負担割合の判定・基準収入額適用申請:市区町村の後期高齢者医療担当窓口
  • 障害認定による65〜74歳の加入:都道府県の後期高齢者医療広域連合

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参考資料

最終確認日

最終確認日: 2026-08-22

本サイトは公的機関ではありません。保険料率・軽減の基準・窓口負担の判定は、お住まいの都道府県の広域連合や市区町村によって取り扱いが異なる場合があります。実際の手続きの前に、本文中の公式リンクやお住まいの市区町村の窓口で最新の内容をご確認ください。