10月に入ると、市区町村の広報やホームページに「高齢者インフルエンザ予防接種のお知らせ」が並びはじめます。同じころ、帯状疱疹や肺炎球菌の案内はがきが届く方もいます。

このとき戸惑いやすいのが費用です。「無料と聞いていたのに窓口で2,500円払った」「隣の市に住む知人は1,500円だった」という食い違いが起きます。これは制度の説明が間違っているのではなく、自己負担額を決めているのが国ではなく市区町村だからです。

この記事では、65歳前後から関係してくる4つのワクチン(インフルエンザ・肺炎球菌・帯状疱疹・新型コロナ)について、誰が対象で、費用がどう決まり、どうすれば無料になる場合があるのかを、厚生労働省と自治体の公式情報から整理します。

この記事でわかること

  • 4つのワクチンそれぞれの対象年齢と接種回数(令和8年度)
  • 「B類疾病の定期接種」という位置づけと、そこから来る4つの特徴
  • 自己負担額が自治体ごとに違う理由と、実際の金額の例
  • 無料になる場合の要件が自治体でどう違うか
  • 対象の年度を逃したときにどうなるか

医療費そのものの負担については後期高齢者医療制度とは?75歳からの保険料・窓口負担・手続きを整理【令和8・9年度】で扱っています。この記事は予防接種の費用にしぼった内容です。

まず結論:国が対象を決め、費用は市区町村が決めます

項目内容
根拠予防接種法(B類疾病の定期接種)
実施主体市区町村
対象者予防接種法施行令で定められた年齢等に該当する方
費用法28条により市区町村が実費を徴収できる(金額は自治体が設定)
無料になる場合生活保護や市区町村民税の課税状況等を勘案して自治体が判断
努力義務なし(自分の意思で希望する場合に接種)
申込先市区町村が指定する医療機関(多くは要予約)

同じワクチンでも、A市は無料、B市は2,500円、ということが普通に起こります。まず見るべきはお住まいの市区町村のページという結論になります。

対象になる人:ワクチン別の一覧(令和8年度)

インフルエンザワクチン(毎年度)

厚生労働省によると、対象は次のとおりです。

  • 65歳以上の方
  • 60〜64歳で、心臓・腎臓または呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活が極度に制限される方、またはHIVによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な方

スケジュールは毎年度、秋冬に1回とされています。60〜64歳の区分は、いずれも身体障害者手帳1級相当が目安として案内されることが多く、手帳の写しや診断書の提出を求められます。

肺炎球菌ワクチン(生涯1回)

  • 65歳の方
  • 60〜64歳で、上記と同じ障害のある方

回数は1回です。ここで令和8年度の変更点があります。厚生労働省は、令和8年度から定期接種で用いるワクチンが23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)から沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に変更になりましたと案内しています。PCV20は1回、筋肉内に接種します。

対象が「65歳以上」ではなく65歳の方に限られている点にも注意が必要です。66歳以降は定期接種の対象から外れます。

帯状疱疹ワクチン(2025年度から定期接種)

2025年度(令和7年度)から、予防接種法に基づく定期接種の対象になりました。厚生労働省が示す対象は次のとおりです。

  • 65歳を迎える方
  • 60〜64歳で、HIVによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な方
  • 2025年度から2029年度までの5年間の経過措置として、その年度内に70・75・80・85・90・95・100歳となる方(100歳以上の方は2025年度に限り全員が対象)

ワクチンは2種類あり、いずれか1種類を接種します。

生ワクチン組換えワクチン
回数・方法皮下に1回2か月以上あけて筋肉内に2回
接種後1年時点の予防効果6割程度9割以上
接種後5年時点4割程度9割程度
接種後10年時点―7割程度

組換えワクチンは2回接種が必要なため、1回目を年度末ぎりぎりに受けると2回目が年度をまたぐことになります。取り扱いは自治体によって異なるため、スケジュールは事前に確認しておきたいところです。なお、過去に水痘や帯状疱疹にかかったことがある方でも定期接種の対象になるとされています。

新型コロナワクチン(毎年度・令和8年度は公表待ち)

新型コロナワクチンも、毎年度秋冬に自治体による定期接種が行われています。厚生労働省のページには、令和7年度の定期接種は令和8年3月31日で終了し、令和8年度については詳細が決まり次第案内する旨が記載されています(2026年9月時点)。

対象や自己負担額の見通しについては、公表を待つ形になります。前年度と同じ内容とは限らないため、自治体の案内が出てから判断するのが確実です。

「B類疾病」であることから来る4つの特徴

これら高齢者向けの定期接種は、予防接種法のB類疾病に位置づけられています。厚生労働省の定期接種実施要領には、B類疾病について次のような注意が書かれています。

B類疾病の定期接種の実施に際しては、接種を受ける努力義務がないことを踏まえ、対象者が自らの意思で接種を希望していることを確認すること。また、B類疾病の定期接種については、法の趣旨を踏まえ、積極的な接種勧奨とならないよう特に留意すること。

ここから、実務上こういうことが起こります。

  1. 努力義務がないので、受ける・受けないは本人の判断です
  2. 積極的な勧奨をしないため、個別の案内はがきを送らない自治体があります(名古屋市は「対象者に個別の案内は送付しておりません」と明記しています)
  3. 本人の意思確認が前提のため、意思確認が難しい場合は家族やかかりつけ医の協力を得ることとされています
  4. 費用は無料と決まっておらず、実費徴収が認められています

「案内が来ないから対象ではない」とは限りません。ここは子どもの定期接種(A類疾病)と大きく違うところです。

費用のしくみ:無料かどうかは自治体が決めます

予防接種法28条は、市町村長が接種を受けた方から実費を徴収できると定めています。ただし「経済的理由により支払うことが困難であると認められる者からは、徴収することができない」というただし書きがあります。

このただし書きについて、定期接種実施要領は次のように具体化しています。

同条ただし書に規定する経済的理由には、市町村民税の課税状況や生活保護又は中国残留邦人等支援給付の受給の有無が含まれるため、予防接種を受けた者又はその保護者のこれらの状況を勘案し、実費を徴収することができるかどうかを判断すること。

つまり、どこまでを免除にするかの判断は市区町村に委ねられています。実際に令和8年度のインフルエンザ予防接種を比べると、次のような差があります。

東京都八王子市愛知県名古屋市
自己負担額2,500円1,500円
接種期間2026年10月1日〜2027年1月31日2026年10月1日〜2027年1月31日
生活保護受給者無料無料
中国残留邦人等支援給付の受給者無料無料
市区町村民税非課税世帯記載なし無料
個別案内接種助成券等の配付なし個別の案内は送付なし

金額そのものも1,000円違いますが、より効いてくるのは非課税世帯が免除の対象に入っているかどうかです。名古屋市は市民税非課税世帯を免除対象に含めていますが、八王子市の案内に記載があるのは生活保護受給証明書と中国残留邦人等支援給付受給証明書の2つです。

住民税非課税世帯かどうかの判定については住民税非課税世帯とは?令和8年度の判定基準と年収の目安を計算で整理しています。

免除を受けるには「接種前」の提出が必要です

名古屋市は「接種後に証明書類を提出いただいても返金はされません」と明記しています。八王子市も、受給証明書を「接種前に提出した方」を無料の要件としています。証明書の準備は予約の段階から始める必要がある、と考えておくのが安全です。

手続き・流れ

  1. 市区町村のページで今年度の内容を確認する(対象・金額・期間・指定医療機関)
  2. 免除に該当しそうなら証明書を先に用意する(生活保護受給証明書などは市区町村の担当課で交付)
  3. 指定医療機関に予約する(多くの自治体で予約が必要です)
  4. 当日の持ち物をそろえる(本人確認書類、費用または証明書、60〜64歳の方は身体障害者手帳の写しまたは診断書)
  5. 医療機関で予診票に記入して接種を受ける

インフルエンザについて、八王子市は「ワクチンが十分な効果を維持する期間は接種後約2週間後から約5か月とされているため、より有効性を高めるために10月から12月中旬までに接種を受けることをご検討ください」と案内しています。流行期が例年12月から3月であることを踏まえた案内です。

なお、他の市区町村の医療機関で受けたい場合は、事前申請が必要になることがあります。八王子市は近隣4市であれば手続きなしで受けられるとしつつ、それ以外は事前申請が必要としています。名古屋市も市外(愛知県内)の協力医療機関で受けるには申請が必要で、接種可能期間も市内より2週間遅い開始になっています。入院・入所中の方は特に確認しておきたい点です。

注意点

  • 対象年度を過ぎると全額自己負担になるのが一般的です。肺炎球菌は65歳、帯状疱疹は65歳と経過措置の年齢に限られており、逃した場合の扱いは自治体にご確認ください
  • 回数を超えた分は定期接種になりません。名古屋市は「2回目以降は、全額自己負担となります」と明記しています
  • 予防接種の費用は医療費控除の対象外とされています(医療費控除のしくみと申請方法を参照)
  • 健康被害が生じた場合の救済制度があります。定期接種として受けた場合は予防接種法に基づく救済、定期接種によらない任意接種の場合は医薬品医療機器総合機構法に基づく救済という違いがあります
  • 明らかに発熱している方(通常37.5℃以上)や重い急性疾患にかかっている方は接種を受けられません。持病のある方は事前に主治医にご相談ください
  • 年度で内容が変わります。特に新型コロナは令和8年度の詳細が2026年9月時点で公表されていません

よくある質問

Q1. 案内はがきが届きませんでした。対象外ということでしょうか。

A. B類疾病の定期接種は積極的な勧奨を行わないこととされているため、個別の案内を送らない自治体があります。名古屋市のように「個別の案内は送付しておりません」と明記している例もあります。対象かどうかは市区町村のページでご確認ください。

Q2. 65歳の誕生日前でも受けられますか。

A. 自治体の運用によります。八王子市はインフルエンザについて「65歳の誕生日の前日から接種可能」と案内しています。基準日の考え方は自治体ごとに異なるため、事前にご確認ください。

Q3. インフルエンザと帯状疱疹を同じ日に受けられますか。

A. 名古屋市は、インフルエンザワクチンと他のワクチンとの同時接種について「医師が特に必要と認めた場合に可能」で、他のワクチンとの接種間隔に制限はないと案内しています。実際の可否は接種する医療機関の医師にご相談ください。

Q4. 帯状疱疹の組換えワクチンで、2回目が翌年度になってしまいそうです。

A. 組換えワクチンは2か月以上の間隔をあけて2回接種します。年度をまたぐ場合の公費の扱いは自治体によって異なるため、1回目の予約前にお住まいの市区町村へご確認ください。

Q5. 肺炎球菌ワクチンを以前に自費で受けました。定期接種を受けられますか。

A. 過去の接種歴がある場合の取り扱いは、ワクチンの種類や接種時期によって異なります。厚生労働省は帯状疱疹について「ご自身の接種記録とともにお住まいの市町村に問い合わせください」としています。肺炎球菌についても、接種記録を用意して市区町村または医療機関にご相談ください。

まとめ:確認するのは「対象年齢・金額・免除の範囲」の3つ

  • インフルエンザは65歳以上(および60〜64歳の一定の障害がある方)が毎年度秋冬に1回
  • 肺炎球菌は65歳の方が1回のみ。令和8年度から使用ワクチンがPCV20に変わりました
  • 帯状疱疹は65歳を迎える方と、2029年度までの経過措置で年度内に70・75・80・85・90・95・100歳になる方
  • 新型コロナの令和8年度の内容は、2026年9月時点で公表待ちです
  • B類疾病のため努力義務はなく、積極的な勧奨も行われません。個別案内が届かない自治体もあります
  • 自己負担額は市区町村が決めます(例:令和8年度のインフルエンザは八王子市2,500円・名古屋市1,500円)
  • 免除の範囲も自治体差があり、市区町村民税非課税世帯が無料になるかどうかは要確認です
  • 免除の証明書は接種前に提出する必要があります
  • 最新情報は厚生労働省 予防接種・ワクチン情報とお住まいの市区町村の公式サイトで必ずご確認ください

いま手元で確認できるのは、①お住まいの市区町村の「高齢者 予防接種」のページ、②今年度の接種期間と指定医療機関、③自分が免除の要件に当てはまるか、の3点です。特に肺炎球菌と帯状疱疹は対象になる年度が限られているため、案内が届かないまま年度末を迎えないよう、誕生日を迎える年度に一度確認しておくことをおすすめします。

迷ったときの問い合わせ先

  • 対象・費用・免除の要件:お住まいの市区町村の保健所・保健センター(予防接種担当)
  • 持病がある場合の接種の可否:かかりつけ医・主治医
  • 実施している医療機関:市区町村の指定医療機関一覧、地域の医師会
  • 健康被害が生じた場合の救済:お住まいの市区町村(予防接種担当)

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参考資料

最終確認日

最終確認日: 2026-09-10

本サイトは公的機関ではありません。対象年齢・接種期間・自己負担額・免除の要件は市区町村ごとに異なり、年度によっても変わります。記事中の金額は各自治体が公表した時点のものです。ワクチンの効果や副反応、接種の可否についての判断は医師にご相談ください。ご自身が対象になるかどうかは、お住まいの市区町村の予防接種担当窓口でご確認ください。