年金の振込通知書を見て、「年金とは別に、少額の振り込みが偶数月にある」と気づいたことはないでしょうか。その正体が年金生活者支援給付金であることがあります。
これは、年金収入やその他の所得が一定の基準以下である年金受給者の生活を支援するために、年金に上乗せして支給される給付金です。ポイントは、年金と違って自動では始まらないこと。請求の手続きをして初めて受け取れます。逆に、いったん受け取り始めれば翌年以降の手続きは原則として不要です。
令和8年4月分から給付基準額が改定され、月額5,620円になりました。この記事では、4つの類型ごとの支給要件・所得基準・金額の計算方法と、請求手続きの流れを、日本年金機構の公式情報をもとに整理します。
この記事でわかること
- 令和8年4月分からの給付基準額と、4類型それぞれの月額
- 老齢・補足的老齢・障害・遺族で異なる支給要件と所得基準
- 給付額を自分で試算する手順(納付済期間と免除期間で計算式が違います)
- 所得が基準を1円超えても急にゼロにならない「補足的老齢」のしくみ
- 毎年9月に届く「はがき型請求書」を出し忘れたときの扱い
年金そのものの受け取り方は年金の繰上げ・繰下げ受給、保険料を納められない期間の扱いは国民年金が払えないときの免除・猶予で扱っています。この記事は年金に上乗せされる給付金にしぼった内容です。
まず結論:令和8年度の給付基準額は月額5,620円
| 類型 | 令和8年4月分からの月額 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 老齢年金生活者支援給付金 | 5,620円を上限に納付実績で計算 | 65歳以上・老齢基礎年金の受給者 |
| 補足的老齢年金生活者支援給付金 | 上記に調整支給率をかけた額 | 所得が老齢の基準をわずかに超える方 |
| 障害年金生活者支援給付金 | 1級 7,025円/2級 5,620円 | 障害基礎年金の受給者 |
| 遺族年金生活者支援給付金 | 5,620円(子が2人以上なら人数で分割) | 遺族基礎年金の受給者 |
日本年金機構によると、令和8年4月分からの給付基準額は、物価変動率をもとに3.2%の引上げとなり、令和7年度の5,450円から5,620円に改定されました。給付金は毎年度、物価の変動に応じて改定される(物価スライド改定)しくみです。
支払いは原則として年6回、偶数月の15日に、年金と同じ受取口座へ年金とは別途振り込まれます。15日が土日祝日にあたるときは、その直前の金融機関の営業日です。各支払月には、原則としてその前月までの2か月分がまとめて支払われます。たとえば12月には10月分と11月分が振り込まれます。
対象になる人:4つの類型で要件が違います
老齢年金生活者支援給付金
日本年金機構は、次の要件をすべて満たす方が対象としています。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受けている
- 請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税となっている
- 前年の年金収入金額とその他の所得の合計が、下表の基準以下である
| 生年月日 | 老齢年金生活者支援給付金 | 補足的老齢年金生活者支援給付金 |
|---|---|---|
| 昭和31年4月2日以後生まれ | 809,000円以下 | 809,000円超 909,000円以下 |
| 昭和31年4月1日以前生まれ | 806,700円以下 | 806,700円超 906,700円以下 |
3つ目の判定で使う金額には、障害年金・遺族年金などの非課税収入は含まれません。ここを誤解して「自分は対象外」と思い込んでいるケースがあります。世帯の課税状況については住民税非課税世帯とは?令和8年度の判定基準と年収の目安もあわせてご確認ください。
補足的老齢年金生活者支援給付金
所得が老齢の基準(昭和31年4月2日以後生まれなら809,000円)をわずかに超えた方向けの類型です。基準を1円超えただけで給付が丸ごと消えると、かえって手取りの逆転が起きてしまうため、所得に応じて段階的に減らすしくみが用意されています。
障害年金生活者支援給付金
- 障害基礎年金を受けている
- 前年の所得額が「4,794,000円+扶養親族の数×38万円」以下である
扶養親族が同一生計配偶者のうち70歳以上の方または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円で計算します。障害年金そのものについては障害年金とは?対象になる人・等級・金額で扱っています。
遺族年金生活者支援給付金
- 遺族基礎年金を受けている
- 前年の所得額が「4,794,000円+扶養親族の数×38万円」以下である
所得基準は障害年金生活者支援給付金と同じ考え方です。遺族基礎年金のしくみは遺族年金とは?遺族基礎年金・遺族厚生年金の対象と金額をご覧ください。
要件を満たしていても支給されない場合
日本年金機構は、次のいずれかにあたるときは支給されないとしています。
- 日本国内に住所がない場合
- 年金が全額支給停止の場合
- 刑事施設等に拘禁されている場合
給付額の計算:老齢は「納付済」と「免除」で単価が違います
老齢年金生活者支援給付金は、定額ではなく保険料の納付実績に応じて計算されます。月額は次の(1)と(2)の合計です(昭和31年4月2日以後生まれの場合)。
- (1)保険料納付済期間に基づく額 = 5,620円 × 保険料納付済月数 ÷ 480月
- (2)保険料免除期間に基づく額 = 11,768円 × 保険料免除月数 ÷ 480月
(2)の単価は、保険料の全額免除・4分の3免除・半額免除の期間が11,768円(老齢基礎年金の満額(月額)の6分の1)、4分の1免除の期間は5,884円です。昭和31年4月1日以前生まれの方は、それぞれ11,734円・5,867円となります。なお、この単価は毎年度の老齢基礎年金の改定に応じて変動します。
意外に思われるかもしれませんが、免除期間の単価のほうが納付済期間より高く設定されています。免除期間は老齢基礎年金そのものが減るため、そこを補う趣旨で単価が高くなっている、という構造です。免除は「保険料を払わなかった空白」ではなく、給付金の計算でも評価される期間になります。
試算してみると
日本年金機構は、納付済月数240か月・全額免除月数60か月の例で次のように計算しています。
- 5,620円 × 240 ÷ 480月 = 2,810円
- 11,768円 × 60 ÷ 480月 = 1,471円
- 合計 4,281円(月額)
同じ式で、いくつかのケースを試算すると次のようになります(それぞれの計算結果に50銭未満の端数が生じたときは切り捨て、50銭以上1円未満の端数は1円に切り上げます)。
| 納付実績 | 納付済分 | 免除分 | 合計(月額) | 年額の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 480か月すべて納付 | 5,620円 | — | 5,620円 | 約67,400円 |
| 納付420か月+全額免除60か月 | 4,918円 | 1,471円 | 6,389円 | 約76,700円 |
| 納付300か月+全額免除120か月 | 3,513円 | 2,942円 | 6,455円 | 約77,500円 |
| 納付360か月のみ | 4,215円 | — | 4,215円 | 約50,600円 |
※編集部が上記の公式計算式にもとづいて試算した参考値です。実際の金額は年金記録によって異なります。
補足的老齢の計算式
補足的老齢年金生活者支援給付金は、納付済期間に基づく額に調整支給率をかけて求めます。
- 5,620円 × 保険料納付済月数 ÷ 480月 × 調整支給率
- 調整支給率 =(909,000円 − 前年の年金収入金額とその他の所得の合計)÷ 100,000円 ※昭和31年4月1日以前生まれの方は906,700円で計算します
たとえば480か月すべて納付済みの方で、前年の収入等が850,000円だった場合、調整支給率は(909,000−850,000)÷100,000=0.59。給付額は5,620円×0.59=3,316円(月額)という計算になります。
所得が809,000円を1円超えたところでは調整支給率がほぼ1に近く、909,000円に近づくにつれてゼロに向かって減っていきます。基準を少し超えただけで急に受け取れなくなるわけではない、という点は押さえておきたいところです。
障害・遺族の金額
障害年金生活者支援給付金は障害等級1級が月額7,025円、2級が月額5,620円です。遺族年金生活者支援給付金は月額5,620円ですが、2人以上の子が遺族基礎年金を受け取っている場合は、5,620円を子の人数で割った金額をそれぞれに支払うとされています。子が3人なら5,620円÷3=1,873円(月額)です。
手続き:最初の1回だけ請求が必要です
新たに年金を請求する方
老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金を新規に請求するときは、年金の請求手続きとあわせて給付金の認定請求書を提出する流れが案内されています。65歳の誕生日を迎える方の請求書は、65歳になる誕生日の前日以降に提出します。
すでに年金を受け取っている方
基礎年金を受給している方で、新たに給付金を受け取ることができる状態になった方には、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が、毎年9月の第1営業日から順次送付されます。届いたら記入して返送するだけで手続きは完了します。
なお、給付金の請求はマイナポータル等を使った電子申請にも対応しています。窓口へ出向く時間が取りにくい場合の選択肢になります。
はがきの期限を過ぎてしまったら
日本年金機構は、はがきに記載された期限までに提出できなかった場合も手続きは可能としています。直近の案内では、翌年1月上旬までに請求書が届けば、前年10月分にさかのぼって支払えるという取扱いが示されていました(令和7年度分は令和8年1月5日が期限として案内されていました)。この日付を過ぎると、請求した月の翌月分からの支払いになります。
期限は年度によって変わるため、お手元のはがきに書かれた日付をご確認ください。
2年目以降は原則として手続き不要
いったん受給が始まり、引き続き支給要件を満たしている場合、翌年以降の手続きは原則として不要とされています。毎年度、前年の所得情報等にもとづいて継続支給の判定が行われ、その結果は毎年10月分(12月支払)から1年間反映されます。
ただし、いったん要件を満たさなくなって給付が止まった方が、その後ふたたび要件を満たした場合は、あらためて請求の手続きが必要です。「一度もらったから自動で復活する」わけではない点に注意が必要です。
注意点:年度で変わるもの・変わらないもの
- 給付基準額は毎年度改定されます。令和8年度は前年度から3.2%の引上げでしたが、物価の動きによっては据え置きや引下げになる年度もあり得ます
- 所得基準額も年度によって変わります。老齢の809,000円という水準は、老齢基礎年金の満額に連動して見直されます
- 免除期間に乗じる単価(11,768円など)も、老齢基礎年金の改定に応じて変動します。日本年金機構は、免除期間がある方の給付金は基準額と同じ3.2%増にならない場合があると説明しています
- 世帯の課税状況が変われば結果も変わります。同居する家族に市町村民税の課税が生じると、老齢・補足的老齢は不該当になり得ます
- 給付金は年金とは別の振込です。通帳の記載も年金とは分かれるため、「振り込まれていない」と早合点する前に、偶数月15日前後の入金を確認してみてください
判定の結果に納得できない場合や、自分が要件を満たすかどうかがはっきりしない場合は、給付金専用ダイヤル(0570-05-4092)や最寄りの年金事務所にご確認ください。
よくある質問
Q1. 年金を受け取っていますが、給付金の案内が届きません。対象外ということですか。
A. はがき型の請求書は、日本年金機構が把握している情報をもとに「新たに対象になる方」へ送付されるものです。届かない場合でも、世帯の課税状況や所得の把握のタイミングによって送付されていないことがあります。要件に心当たりがある場合は、給付金専用ダイヤルまたは年金事務所にお問い合わせください。
Q2. 老齢基礎年金を繰上げ受給しています。65歳前でも対象になりますか。
A. 老齢年金生活者支援給付金の要件は「65歳以上で老齢基礎年金を受けている」ことです。繰上げ受給をしていても、給付金の請求書は65歳になる誕生日の前日以降に提出することが案内されています。繰上げ・繰下げそのものの損得は年金の繰上げ・繰下げ受給をご覧ください。
Q3. 遺族年金をもらっています。この収入は所得基準の判定に入りますか。
A. 日本年金機構は、障害年金・遺族年金等の非課税収入は、給付金の判定に用いる所得には含まれないとしています。遺族年金だけで生活している方が、所得の判定上は「収入が低い」と扱われることがあります。
Q4. 所得が基準を少しだけ超えました。まったく受け取れませんか。
A. 老齢の基準(昭和31年4月2日以後生まれで809,000円)を超えても、909,000円以下であれば補足的老齢年金生活者支援給付金の対象になる場合があります。金額は所得に応じて段階的に減るしくみです。
Q5. 給付金は課税されますか。確定申告は必要ですか。
A. 年金生活者支援給付金は、公的年金等とは別の給付として支払われるものです。ご自身の申告が必要かどうかは、他の収入との兼ね合いで変わるため、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
まとめ
- 年金生活者支援給付金は、請求手続きをして初めて受け取れる給付金です
- 令和8年4月分からの給付基準額は月額5,620円(前年度から3.2%の引上げ)
- 老齢は「65歳以上・世帯全員が市町村民税非課税・前年の年金収入等が809,000円以下(昭和31年4月2日以後生まれ)」の3要件
- 金額は納付済期間と免除期間で単価が異なり、免除期間の単価のほうが高く設定されています
- 基準を少し超えた方には補足的老齢があり、所得に応じて段階的に減額されます
- 障害は1級7,025円・2級5,620円、遺族は5,620円(子が複数なら人数で分割)
- 新たに対象になる方には毎年9月の第1営業日から順次はがき型請求書が届きます
- 2年目以降の手続きは原則不要。判定結果は毎年10月分(12月支払)から1年間反映されます
- 最新情報は日本年金機構「年金生活者支援給付金」で必ずご確認ください
まず確認したいのは、①世帯全員が市町村民税非課税かどうか、②前年の年金収入とその他の所得の合計、③9月以降に日本年金機構からのはがきが届いていないか、の3点です。心当たりがあれば、給付金専用ダイヤルへの問い合わせが最短ルートになります。
迷ったときの問い合わせ先
- 給付金の要件・請求手続き・通知書の再発行:給付金専用ダイヤル(0570-05-4092)、または最寄りの年金事務所
- 世帯の課税・非課税の判定:お住まいの市区町村の住民税担当窓口
- 年金記録(納付済期間・免除期間)の確認:ねんきんネット、または年金事務所
- 年金と税の個別の判断:所轄の税務署、または税理士
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参考資料
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「遺族年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「令和8年度の年金額および年金生活者支援給付金支給金額の改定について」
最終確認日
最終確認日: 2026-08-30
本サイトは公的機関ではありません。給付基準額・所得基準額は年度ごとに改定されます。記事中の試算は公表されている計算式にもとづく参考値であり、実際の支給額を保証するものではありません。ご自身が対象になるかどうかの判断は、給付金専用ダイヤルや年金事務所など所管の窓口で最新の内容をご確認ください。