パスポートの申請、年金の手続き、相続、婚姻届。戸籍の証明書が必要になる場面は意外と多いのに、「本籍地が遠くて取りに行けない」という悩みは長く続いてきました。
その状況が令和6年3月1日から変わりました。戸籍法の改正で「広域交付」が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになったのです。全国各地に本籍が散らばっていても、1か所の窓口でまとめて請求できます。
ただし、広域交付には請求できる人・請求できる証明書の範囲に制限があり、「行けば何でも取れる」わけではありません。この記事では、戸籍証明書の取り方を4つのルートで比較し、それぞれの向き・不向きを法務省と市区町村の公式情報をもとに整理しました。
この記事でわかること
- 広域交付で「できること」と「できないこと」
- 請求できる人の範囲(兄弟姉妹の戸籍は取れません)
- 窓口・コンビニ交付・郵送・マイナポータルの使い分け
- 手数料の目安と、当日中に受け取れないことがある理由
- 相続手続きで戸籍を集めるときの考え方
- 令和8年5月で届出期間が終わった「戸籍のフリガナ」のいま
引っ越しにともなう届出は引っ越しのときの役所手続きまとめ、マイナンバーカードの手続きはマイナンバーカードの手続きまとめで扱っています。この記事は戸籍の証明書そのものの取り方にしぼった内容です。
まず結論:4つの取り方を比較
| 取り方 | どこで | 取れるもの | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 広域交付(窓口) | 全国どこの市区町村でも | 戸籍・除籍・改製原戸籍の全部事項証明書 | 本籍地が遠い・複数の本籍地の戸籍をまとめて取りたい |
| 本籍地の窓口 | 本籍地の市区町村 | すべての証明書(附票・身分証明書・抄本を含む) | 附票や一部事項証明書が必要・古い紙の戸籍が必要 |
| コンビニ交付 | 全国のコンビニ等 | 戸籍全部事項証明書・個人事項証明書 | 本籍地が対応していて、平日に窓口へ行けない |
| マイナポータル | オンライン | 戸籍電子証明書提供用識別符号 | 添付書類として提出する先がオンライン対応している |
広域交付は便利ですが万能ではありません。「全部事項証明書だけ・本人と直系の親族だけ・窓口に本人が行く」という3つの条件がついています。まずここを押さえておくと、二度手間を避けられます。
広域交付でできること
法務省によると、令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました。
- 【どこでも】 本籍地が遠くにある方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で請求できます
- 【まとめて】 ほしい戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の市区町村の窓口でまとめて請求できます
これまでは本籍地の市区町村に郵送で請求し、定額小為替を用意して往復で1〜2週間待つ、というのが遠方の戸籍を取る一般的な方法でした。広域交付が使える場面では、この手間がなくなります。
請求できる人
法務省は、次の方の戸籍証明書等を請求できるとしています。
- 本人
- 配偶者
- 父母、祖父母など(直系尊属)
- 子、孫など(直系卑属)
ここで注意したいのが、兄弟姉妹の戸籍は広域交付では請求できないという点です。相続の手続きでは兄弟姉妹の戸籍が必要になることがありますが、その場合は本籍地の市区町村へ請求することになります。また、おじ・おば・いとこなども対象外です。
請求できないもの
法務省とさいたま市の案内をまとめると、次のものは広域交付では請求できません。
| 請求できないもの | 代わりの入手先 |
|---|---|
| コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍 | 本籍地の市区町村 |
| 一部事項証明書・個人事項証明書(いわゆる抄本) | 本籍地の市区町村・コンビニ交付 |
| 戸籍の附票 | 本籍地の市区町村 |
| 身分証明書 | 本籍地の市区町村 |
「コンピュータ化されていない戸籍」は、古い手書きの戸籍がそのまま紙で保管されている場合などが該当します。相続で先祖の戸籍をさかのぼるときにぶつかりやすいところです。
また、戸籍の附票(住所の履歴が記録されたもの)は広域交付の対象外です。相続登記や車の名義変更などで附票を求められることがあるため、必要書類を確認してから窓口に行くと確実です。
広域交付の使い方
窓口に本人が行く必要があります
法務省は、次の点を明記しています。
- 戸籍証明書等を請求できる方本人が市区町村の戸籍担当窓口に行って請求する必要があります
- 郵送や代理人による請求はできません(委任状があっても代理人請求は不可とされています)
- 窓口に来た方の本人確認のため、顔写真付きの身分証明書の提示が必要です
顔写真付きの身分証明書の例として挙げられているのは、運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなどです。さいたま市の案内では、資格確認書や年金手帳など顔写真のない本人確認書類では広域交付の請求ができないと注意が呼びかけられています。ここは通常の窓口請求より厳しい取り扱いです。
手数料の目安
さいたま市の案内による手数料は次のとおりです。
| 証明書 | 手数料 |
|---|---|
| 戸籍謄本(全部事項証明) | 450円 |
| 除籍謄本(全部事項証明) | 750円 |
| 改製原戸籍謄本(全部事項証明) | 750円 |
金額は市区町村の条例で定められますが、この水準が一般的です。
当日中に受け取れないことがあります
広域交付では、請求を受けた市区町村が本籍地の市区町村に内容を確認する必要があります。そのため、さいたま市の案内では次のような注意が示されています。
- 各市区町村で窓口の終了時間が異なるため、請求する戸籍の内容によっては本籍地への確認が行えず、当日中に交付できない場合がある
- 夕方以降の請求は、請求書を預かって後日交付になることがある
また、複数の本籍地にまたがる戸籍をまとめて請求すると、それだけ確認先が増えます。時間に余裕をもって、できれば午前中に窓口へ行くのが現実的な対策です。
窓口に行かずに取る方法
コンビニ交付
マイナンバーカードがあれば、コンビニのマルチコピー機で戸籍証明書を取得できる場合があります。ただし条件があります。
- 本籍地の市区町村がコンビニ交付サービスを実施していること
- 住所地と本籍地が異なる場合は、本籍地の市区町村へ利用登録申請をしていること
利用登録申請は、コンビニのマルチコピー機またはICカードリーダーを備えたパソコンから行えます。船橋市・横浜市・文京区の案内では、利用可能になるまでに5開庁日ほどかかるとされています。「明日必要」という場面には間に合わないため、余裕をもって登録しておくのがおすすめです。
手数料は市区町村ごとに定められており、窓口より安く設定している自治体もあります。マイナンバーカードの取得や電子証明書の更新についてはマイナンバーカードの手続きまとめをご覧ください。
戸籍電子証明書提供用識別符号(マイナポータル)
戸籍法の改正で、紙の戸籍証明書を提出しなくても手続きが完結する道も用意されました。
マイナポータルから戸籍電子証明書提供用識別符号(有効期限3か月のパスワード)を取得し、申請情報とあわせて提出先の行政機関に送信すると、提出先が電子的な戸籍証明書を確認できるしくみです。法務省は、パスポートの発給申請などでこの方法によりオンラインで手続が完結すると説明しています。
江東区の案内による手数料は、戸籍電子証明書提供用識別符号が1通400円、除籍分が1通700円です。ただし、マイナポータルから申請する場合や、同内容の戸籍証明書を同時に取得する場合は無料とされています。
利用できる手続きは順次拡大しているため、提出先がオンライン提出に対応しているかを先に確認してから使うのが確実です。
そもそも戸籍の添付が不要になった手続きもあります
法務省は、戸籍法の改正によって次のことが可能になったと案内しています。
- 戸籍の届出時:本籍地以外の市区町村に婚姻届などを提出する場合でも、提出先の職員が本籍地の戸籍を確認できるため、戸籍証明書等の添付が原則不要
- 社会保障の手続き:児童扶養手当の認定手続などで、申請書とあわせてマイナンバーを提示することで、行政機関が戸籍関係情報を確認でき、戸籍証明書等の添付が不要
つまり「戸籍を取りに行く前に、そもそも必要かどうかを提出先に確認する」のが、いちばんの時短になります。児童手当のしくみのような手当の申請でも、必要書類が以前と変わっている可能性があります。
相続手続きで戸籍を集めるとき
相続の場面では、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になります。ここで広域交付が使えるかどうかは、ケースによって分かれます。
| 状況 | 広域交付 |
|---|---|
| 親(直系尊属)の戸籍を子が請求 | 使えます |
| 子(直系卑属)の戸籍を親が請求 | 使えます |
| 配偶者の戸籍を請求 | 使えます |
| 兄弟姉妹の戸籍を請求 | 使えません(本籍地へ請求) |
| コンピュータ化されていない古い戸籍 | 使えません(本籍地へ請求) |
| 戸籍の附票 | 使えません(本籍地へ請求) |
集めた戸籍をもとに、法務局で「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受けておくと、金融機関・法務局・税務署など複数の窓口で戸籍の束の代わりに使えます。相続にかかる税金の判断は相続税の基本 基礎控除・税率・申告期限、遺された家族の年金は遺族年金とは?で整理しています。
なお、相続放棄や遺産分割など個別の判断が必要な場面では、弁護士・司法書士など有資格者にご相談ください。
戸籍のフリガナはどうなったか
令和7年5月26日に改正戸籍法が施行され、戸籍に氏名の振り仮名(フリガナ)が記載されることになりました。市区町村から通知が送られ、内容が違う場合は届出をする、という流れです。
法務省によると、この届出期間は令和8年5月25日で終了しました。現在の取り扱いは次のとおりです。
- 届出をしなかった方は、施行日から1年を経過した日以後、本籍地の市区町村長が管轄法務局長等の許可を得て、通知したフリガナを戸籍に記載します
- 届出をしなかった場合に記載されたフリガナは、家庭裁判所の許可を得ずに変更することができるとされています(届出を行った後に変更する場合は家庭裁判所の許可が必要です)
つまり、「通知が来ていたのに気づかず、違うフリガナが載ってしまった」という場合でも、1回は裁判所の手続きなしで直せる余地があります。戸籍証明書を取る機会があれば、フリガナの記載もあわせて確認しておくとよいでしょう。
なお法務省は、「届出には手数料がかかる」「届出をしないと罰金」などとして金銭を要求するものはすべて詐欺だと注意を呼びかけています。
注意点
- 広域交付は「全部事項証明書」だけです。 抄本(個人事項証明書)が必要な場面では使えません。提出先に「謄本か抄本か」を確認しておきましょう
- 兄弟姉妹の戸籍は取れません。 相続で必要になるケースが多いので、事前に本籍地への請求も検討してください
- 顔写真付きの本人確認書類が必須です。 資格確認書や年金手帳だけでは請求できないとされています
- 古い紙の戸籍は対象外です。 出生までさかのぼる場合、途中で本籍地への請求が必要になることがあります
- 当日中に交付されないことがあります。 締切時間や請求件数によって後日交付になる場合があります
- 取り扱いには市区町村差があります。 支所や出張所では広域交付を扱っていない場合があるため、行く前に窓口を確認してください
よくある質問
Q1. 委任状があれば代理人でも広域交付を利用できますか。
A. 法務省は「郵送や代理人による請求はできません」としています。委任状があっても、請求できる方ご本人が窓口に行く必要があります。本人が行けない場合は、本籍地の市区町村への郵送請求など、従来の方法を検討することになります。
Q2. 配偶者の親(義父母)の戸籍は広域交付で取れますか。
A. 広域交付で請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍です。義父母は自分から見て直系尊属にあたらないため、対象外とされています。配偶者本人が請求するか、本籍地の市区町村へ請求する方法を検討してください。
Q3. 何通でもまとめて請求できますか。
A. 通数の上限が一律に定められているわけではありませんが、請求する戸籍が多いほど本籍地への確認に時間がかかり、当日交付が難しくなります。必要な範囲を事前に整理し、時間に余裕をもって窓口へ行くことをおすすめします。
Q4. コンビニ交付と広域交付、どちらが早いですか。
A. すでにコンビニ交付の利用登録が済んでいるなら、コンビニのほうが早く、時間帯の自由度もあります。一方、登録がまだの場合は5開庁日ほどかかるため、急ぐなら広域交付のほうが早いことが多くなります。ただし広域交付は全部事項証明書のみで、附票などは取れません。
Q5. 手数料は現金以外でも払えますか。
A. 市区町村によって取り扱いが異なります。キャッシュレス決済に対応している窓口も増えていますが、現金のみの窓口もあります。事前に市区町村の公式サイトでご確認ください。郵送請求の場合は定額小為替を使うのが一般的です。
まとめ
- 令和6年3月1日から、本籍地以外の窓口でも戸籍証明書を請求できる「広域交付」が始まりました
- 請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍。兄弟姉妹は対象外です
- 請求できるのは全部事項証明書のみ。一部事項証明書・戸籍の附票・身分証明書は取れません
- 本人が窓口に行き、顔写真付きの本人確認書類を提示する必要があります。郵送・代理人は不可
- 手数料の目安は戸籍450円、除籍・改製原戸籍750円。当日交付にならない場合があります
- コンビニ交付は本籍地が対応していれば便利ですが、住所地と違う場合は利用登録に5開庁日ほどかかります
- 戸籍のフリガナの届出期間は令和8年5月25日で終了。届出をしなかった方の記載は、家庭裁判所の許可なしで変更できるとされています
- 最新情報は法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」やお住まいの市区町村の公式サイトで必ずご確認ください
窓口へ行く前に、①提出先が求めているのは謄本か抄本か、②附票は必要か、③そもそも戸籍の添付が省略できないか——この3点を確認しておくと、無駄足を避けられます。
迷ったときの問い合わせ先
- 広域交付の取り扱い窓口・手数料:お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の戸籍担当窓口
- 古い戸籍・戸籍の附票・身分証明書:本籍地の市区町村の戸籍担当窓口
- コンビニ交付の利用登録:本籍地の市区町村
- 戸籍のフリガナ:本籍地の市区町村、法務局
- 相続に関する個別の判断:弁護士、司法書士、家庭裁判所
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参考資料
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
- 法務省「戸籍にフリガナが記載されます」
- さいたま市「本籍地が市内ではないが、市内の窓口で戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)等を取得できますか」
- 江東区「戸籍(除籍)電子証明書提供用識別符号」
- 横浜市「【市外にお住まいの人】戸籍謄本などをコンビニ交付で取得する」
最終確認日
最終確認日: 2026-08-22
本サイトは公的機関ではありません。広域交付の取り扱い窓口・手数料・必要書類は市区町村によって異なる場合があります。実際の請求の前に、本文中の公式リンクやお住まいの市区町村の窓口で最新の内容をご確認ください。相続に関する個別の判断は、弁護士・司法書士など有資格者にご相談ください。