身近な人が亡くなったとき、悲しみのなかで「相続税はかかるのだろうか」「いつまでに何をすればいいのだろう」と不安を感じる方は多いと思います。相続税には基礎控除があり、財産が基礎控除以下なら原則として申告も納税も不要です。

この記事では、相続税の全体像、基礎控除の計算、税率、申告期限と納付方法を、国税庁の公式情報をもとにやさしく整理します。

この記事でわかること

  • 相続税の基本的なしくみ
  • 基礎控除の計算方法(3,000万円+600万円×法定相続人)
  • 課税対象になる財産・ならない財産
  • 税率の段階と計算の流れ
  • 申告期限(10ヶ月)と納付方法
  • よくある質問(FAQ)

まず結論

相続税は、亡くなった方(被相続人)の財産を相続や遺贈で受け継いだ人にかかる税金です。財産の総額が基礎控除を超える場合に課税されます。

要点は次のとおりです。

  • 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
  • 基礎控除を超えた部分の金額に対して、10〜55%の累進税率で課税
  • 申告・納付の期限は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10ヶ月以内
  • 配偶者には軽減税額が大きい(配偶者の税額軽減)
  • 小規模宅地等の特例で居住用宅地の評価額を最大80%減額できる場合がある

財産の総額が基礎控除以下であれば、原則として申告は不要です。ただし、特例を使って税額を0円にする場合は申告が必要なケースがあります。

基礎控除の計算

相続税の課税の有無は、まず基礎控除との比較で判断します。

計算式

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

具体例

法定相続人基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円

法定相続人は、民法で定められた相続人(配偶者と血族相続人)を指します。相続放棄をした人も基礎控除の計算上は法定相続人に含まれます。

対象になる財産・ならない財産

相続税の対象になる財産は、現金や不動産だけではありません。

課税対象になる主な財産

  • 現金・預貯金
  • 土地・建物(評価額は路線価や固定資産税評価額をベース)
  • 株式・有価証券
  • 自動車・貴金属・美術品など動産
  • 生命保険金(一定の非課税枠あり)
  • 死亡退職金(一定の非課税枠あり)
  • 相続開始前一定期間の生前贈与

課税対象にならない(または非課税枠がある)財産

  • 墓地・仏壇・神具など祭祀財産(原則非課税)
  • 国・地方公共団体への寄附財産(一定要件)
  • 生命保険金・死亡退職金のうち「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠

控除できる債務・葬式費用

  • 被相続人の借入金・未払医療費・未払税金などの債務
  • 葬式費用(通夜・本葬の費用など。香典返しや初七日以降は対象外)

これらを差し引いて「正味の遺産額」を計算します。

税率と計算の流れ

相続税は、課税遺産総額を法定相続分で按分し、各人の取得金額に応じた税率を適用する独特の計算方法をとります。

計算ステップ

  1. 課税価格の合計額を計算(プラスの財産 − 債務・葬式費用 + 生前贈与加算)
  2. 課税価格の合計から基礎控除を引いて「課税遺産総額」を算出
  3. 課税遺産総額を法定相続分で按分
  4. 按分後の金額に税率を適用して相続税の総額を算出
  5. 各相続人の実際の取得割合で総額を分け、各人の税額を計算
  6. 配偶者控除や未成年者控除などを適用

速算表(法定相続分に応ずる取得金額ごと)

取得金額税率控除額
1,000万円以下10%0円
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

最新の正確な数値は国税庁の公式情報でご確認ください。

申告期限と納付方法

相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。

申告先

被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に申告します。相続人の住所地ではない点に注意が必要です。

申告に必要な主な書類

  • 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までの全部)
  • 法定相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書または遺言書の写し
  • 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書
  • 預貯金・有価証券の残高証明書
  • 葬式費用の領収書
  • 各相続人のマイナンバー確認資料

納付方法

  • 金融機関の窓口で現金納付
  • 税務署での現金納付
  • e-Taxを使った電子納税
  • 期限内に金銭で一括納付できない場合は、延納や物納の制度を申請

⚠ 申告期限の10ヶ月は、財産の整理・分割協議・評価を考えると意外と短い時間です。早めに専門家に相談することをおすすめします。

注意点

  • 配偶者は「配偶者の税額軽減」により、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い額まで相続税がかからない制度があります(適用には申告が必要)
  • 小規模宅地等の特例で、居住用や事業用の宅地評価額を最大80%減額できる場合があります
  • 相続放棄をする場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります
  • 相続税の計算や財産評価は専門性が高く、税理士への相談がほぼ必須です

よくある質問(FAQ)

Q1. 財産が基礎控除以下なら本当に何もしなくていいですか?

財産が基礎控除以下であれば、原則として相続税の申告は不要です。ただし、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約には別途手続きが必要です。相続登記は2024年4月から義務化されています。

Q2. 配偶者は本当に1億6,000万円まで非課税ですか?

配偶者の税額軽減により、配偶者が取得した正味の遺産額が法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い額までは、相続税がかからない制度があります。ただし、適用には申告書の提出が必要です。

Q3. 生命保険金にも相続税はかかりますか?

被相続人が保険料を負担していた生命保険金は、みなし相続財産として相続税の対象になります。ただし「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があります。

Q4. 相続放棄するとどうなりますか?

相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったものとみなされ、財産も債務も一切引き継がなくなります。家庭裁判所への申述が必要で、原則として相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きする必要があります。

Q5. 相続税の計算は自分でできますか?

基本的な計算は理解できても、財産の評価(不動産・非上場株式など)や特例の適用判定は専門性が高く、誤ると後で追徴課税のリスクがあります。財産規模が大きい場合や事業承継を含む場合は、相続税に詳しい税理士に相談するのが安全です。

まとめ

相続税の基本ポイントを振り返ります。

  • 基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人」
  • 課税対象は不動産・現金・株式・生命保険など幅広い
  • 税率は10〜55%の累進
  • 申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月
  • 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例など軽減制度あり
  • 複雑なため税理士への相談を推奨

次のアクションとして、被相続人のおおよその財産を一覧化し、基礎控除を超えそうかを早めに確認しましょう。最新情報は国税庁タックスアンサー No.4152 相続税の計算で必ずご確認ください。


※本サイトは公的機関ではありません。制度の内容は年度や法改正により変わることがあります。個別の判断が必要な場合は、税務署・税理士などの専門家にご相談ください。