11月に入ると、勤務先の経理・総務担当から「扶養控除等申告書」をはじめとする年末調整の書類が配られます。毎年届く書類なので、内容を深く見ずに済ませてしまう方も多いのではないでしょうか。
令和8年分は、税制改正によって扶養親族の所得基準が年の途中(12月1日)から変わるという珍しい年です。これまで基準を少し超えていて対象外だった家族が、12月の年末調整では新たに扶養控除の対象になる場合があります。
この記事では、扶養控除等申告書を中心に、年末調整で提出する申告書の種類・記載項目・令和8年度税制改正の影響を、国税庁の公式情報にもとづいて整理します。
この記事でわかること
- 扶養控除等申告書とは何か、誰が提出する必要があるか
- 年末調整で提出する申告書の種類(扶養控除等申告書・基礎控除申告書ほか)
- 扶養親族・源泉控除対象配偶者などの区分と記載のポイント
- 令和8年度税制改正で扶養親族の所得基準が引き上げられた点
- 提出時期・提出先・記載を間違えたときの対応
まず結論:扶養控除等申告書は勤務先に提出する年末調整の基本書類
国税庁によると、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、給与の支払を受ける人(給与所得者)が、扶養控除などの諸控除を受けるために勤務先に提出する書類とされています(国税庁)。
ポイントは次の4つです。
- 給与所得者は原則としてこの申告書を提出する必要があります。提出しないと、月々の源泉徴収で受けられる控除が適用されず、年末調整も行われません
- 提出先は勤務先(給与の支払者)で、税務署に直接提出するものではありません
- 2か所以上から給与を受けている場合、この申告書を提出できるのは主たる給与の支払者1か所のみです
- 令和8年分は、年の途中(12月1日)で扶養親族等の所得基準が変わるため、これまで対象外だった家族が年末調整の時点で新たに対象になることがあります
なお、「給与所得者の扶養親族申告書」(個人住民税向け)はこの申告書と統合された様式になっているため、税金の種類ごとに別の書類を書く必要はありません(国税庁)。
対象になる人(ケース別)
会社員・パート・アルバイトで給与を受けている人
給与の支払を受ける人は、扶養親族の有無にかかわらず原則としてこの申告を行う必要があるとされています(国税庁)。扶養している家族がいない一人暮らしの方でも、基礎的な控除(後述の基礎控除申告書等)の対象になるため、提出自体は必要です。
年の途中で就職・転職した人
中途就職の場合は、就職後最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出するとされています(国税庁)。前の勤務先の源泉徴収票の添付が必要になる場合もあるため、退職時に受け取った書類は保管しておくと安心です。
2か所以上から給与を受けている人
主たる給与の支払者1か所にのみ提出できます。もう一方の勤務先では「従たる給与についての扶養控除等申告書」という別の書式を使う仕組みが用意されています(国税庁)。
家族の中に、令和8年中の所得が58万円超62万円以下の人がいる家庭
令和8年度税制改正により、扶養親族等の所得要件が12月1日から変わります(詳細は後述)。これまで「所得が58万円を超えるため扶養親族に該当しない」と判断していた家族が、12月の年末調整の時点では対象になる可能性があります。パートやアルバイトをしている配偶者・子ども・親がいる家庭は、年末の収入見込みを確認しておく価値があります。
確認するポイント
1. 扶養控除等申告書で使う主な区分
国税庁の記載要領では、扶養親族等はおおむね次のように区分されています(国税庁「令和8年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」記載要領)。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 同一生計配偶者 | 生計を一にする配偶者で、所得の見積額が一定額以下の人 |
| 源泉控除対象配偶者 | 所得者本人・配偶者双方の所得が一定額以下の場合に、月々の源泉徴収で控除の対象になる配偶者 |
| 控除対象扶養親族 | 扶養親族のうち年齢16歳以上の人 |
| 特定扶養親族 | 控除対象扶養親族のうち19歳以上23歳未満の人 |
| 特定親族 | 生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、所得が一定の範囲内にある人(令和7年度改正で新設) |
| 老人扶養親族 | 控除対象扶養親族のうち70歳以上の人。同居している場合は「同居老親等」の欄にチェックが必要 |
| 源泉控除対象親族 | 控除対象扶養親族または特定親族のうち、所得の見積額が100万円以下(令和8・9年分は、給与収入のみなら174万円以下)の人 |
※2026年10月14日訂正:源泉控除対象親族の給与収入の目安を「165万円以下」としていましたが、令和8・9年分の給与所得控除(最低保障額74万円)で計算すると174万円以下です(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」)。
「特定親族」は、令和7年度税制改正で新しくできた区分です。19〜22歳の子どもがアルバイトなどで年収を増やしても、一定の範囲内であれば「特定親族特別控除」という形で控除を受けられる仕組みが導入されています(詳細な控除額は国税庁の公式資料でご確認ください)。
2. 16歳未満の子どもも書く欄がある
控除対象扶養親族は16歳以上が対象ですが、16歳未満の子どもも「住民税に関する事項」の欄に記載する必要があります(国税庁)。所得税の扶養控除の対象にはなりませんが、住民税の非課税判定などに影響するため、書き忘れないようにする必要があります。
3. 「令和8年中の所得の見積額」は収入額そのものではない
申告書には「所得の見積額」を書く欄がありますが、これは収入金額から必要経費や給与所得控除額を差し引いた後の金額です。所得の種類が給与だけの場合は、収入金額から給与所得控除額を差し引いた金額が所得の見積額になります(国税庁)。パート収入だけの家族について「収入額をそのまま書いてしまう」間違いが起きやすいポイントです。
4. マイナンバー(個人番号)の記載
本人、源泉控除対象配偶者、源泉控除対象親族、16歳未満の扶養親族などについてマイナンバーの記載欄がありますが、一定の要件のもとで記載を省略できる場合があります。詳細は勤務先の担当者に確認するよう案内されています(国税庁)。
手続き・流れ(一緒に配られる他の書類も含めて)
年末調整では、扶養控除等申告書のほかに複数の書類を同時期に提出することになります。国税庁が公表している令和8年分の年末調整関係様式は次のとおりです(国税庁)。
| 申告書 | 主な目的 |
|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書 | 扶養控除・配偶者控除の前提となる家族の情報を届け出る |
| 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書 | 基礎控除・配偶者(特別)控除・特定親族特別控除などの適用を受けるための申告 |
| 保険料控除申告書 | 生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除などを申告する |
| (住宅ローンを利用している場合)住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅ローン控除の適用を受けるための申告。税務署から本人あてに交付される |
このうち「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼…」は、令和8年度税制改正にあわせて様式が変更されています(国税庁)。基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除の適用を受ける場合には、令和8年の最後の給与の支払を受ける日の前日までに提出する必要があるとされています(国税庁)。
提出の大まかな流れは次のとおりです。
- 11月頃、勤務先から各種申告書一式が配布される
- 前年から家族構成・所得の見込みに変更がなければ、「簡易な申告書」(異動がない旨を記載するだけの簡略版)を利用できる場合がある(国税庁)
- 記載内容を確認し、必要事項・マイナンバーを記入
- 生命保険料控除証明書や国民年金保険料控除証明書など、添付が必要な書類を一緒に提出
- 勤務先が定める期限までに提出(多くの場合、その年最後の給与支払日より前)
生命保険料控除・地震保険料控除の証明書の取り扱いについては、生命保険料控除の記事や年末調整の全体像については年末調整とは?会社員が知っておきたい基本もあわせてご確認ください。
注意点
令和8年分は「年の途中で基準が変わる」珍しい年
国税庁によると、令和8年度税制改正は原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。このため、令和8年11月までの源泉徴収事務に変更は生じませんが、令和8年12月に行う年末調整では、引き上げ後の基礎控除額などにもとづいて1年間の税額を計算し直すとされています(国税庁)。
あわせて、扶養親族等の所得要件(合計所得金額の基準)も、次のように引き上げられます(国税庁)。
| 区分 | 改正前(令和8年11月まで) | 改正後(令和8年12月〜) |
|---|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の生計を一にする子 | 所得58万円以下(給与収入123万円以下) | 所得62万円以下(給与収入136万円以下) |
| 特定親族 | 所得58万円超123万円以下(給与収入123万円超188万円以下) | 所得62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 所得58万円超133万円以下 | 所得62万円超133万円以下 |
| 勤労学生 | 所得85万円以下(給与収入150万円以下) | 所得89万円以下(給与収入163万円以下) |
国税庁は、この改正により新たに扶養親族等の要件を満たすこととなった親族について扶養控除等の適用を受けるためには、扶養控除等(異動)申告書等の提出が必要になるとしています(国税庁)。つまり、11月時点で「所得が基準を少し超えるから扶養親族に該当しない」と判断していた家族がいても、12月の年末調整のタイミングでは対象になる可能性があるため、年末の所得見込みが固まった段階で、勤務先の担当者に確認・申告書の更新を相談することをおすすめします。
令和9年分の申告書はすでに新基準で作られている
11月頃には、令和8年分(本年分の年末調整用)とあわせて、令和9年分(来年の給与から使う分)の扶養控除等申告書も配布されるのが通例です。令和9年分の様式は、改正後の新しい基準にもとづいて作成されています(国税庁)。令和8年分の書類は旧基準の記載が残っている場合があるため、「どちらの年分の申告書か」を確認してから記入することが大切です。
記載内容に変更があったとき
申告書の提出後に記載内容が変わった場合は、別途「異動申告書」を提出するか、申告書の該当箇所を補正するとされています(国税庁)。結婚・出産・家族の就職や退職など、年の途中で扶養状況が変わったときは、気づいた時点で勤務先に申し出ることが推奨されます。
非居住者である親族を扶養に入れる場合
海外に住む親族について扶養控除等の適用を受ける場合は、親族関係書類や送金関係書類など、通常より多くの添付書類が必要になります(国税庁)。該当する方は、提出前に勤務先や国税庁の公式情報で必要書類を確認しておくと手続きがスムーズです。
よくある質問
Q1. 扶養控除等申告書を出さないとどうなりますか? A. 月々の源泉徴収で扶養控除などの各種控除が適用されず、年末調整も行われないとされています(国税庁)。結果として、源泉徴収される税額が本来より多くなる場合があります。
Q2. パート収入のある配偶者は扶養控除等申告書にどう書けばいいですか? A. 配偶者の「令和8年中の所得の見積額」を、収入額から給与所得控除額を差し引いた所得ベースで記載します。源泉控除対象配偶者・配偶者特別控除の対象となるかどうかは所得の水準によって区分が変わるため、正確な見込み額がわからない場合は、勤務先の年末調整担当者や税務署にご確認ください。
Q3. 令和8年12月から基準が変わるなら、11月に出した申告書はもう意味がないのですか? A. そうではありません。11月時点の申告内容は月々の源泉徴収の基礎として引き続き使われます。ただし、新基準で新たに扶養親族等に該当する家族がいる場合は、年末調整までに申告書を更新する必要があるとされています(国税庁)。
Q4. 「簡易な申告書」とは何ですか? A. 前年に提出した申告書の記載事項から異動がない場合に、氏名・住所・マイナンバーなどの記載と「異動がない」旨の記載だけで済ませられる簡略版の様式です(国税庁)。ただし、令和8年分は基準そのものが変わるため、家族の所得が基準付近にある場合は簡易な申告書でよいか慎重に確認することをおすすめします。
Q5. 記入を間違えた場合はどうすればいいですか? A. 提出後に内容の誤りに気づいた場合は、勤務先の年末調整担当者に相談し、訂正や異動申告書の提出で対応するのが一般的です。年末調整後に誤りが判明した場合は、確定申告で精算できることもあります。個別のケースは税務署または税理士にご相談ください。
まとめ
扶養控除等申告書は、毎年11月頃に配られる年末調整の基本書類です。令和8年分は、税制改正によって扶養親族等の所得基準が12月1日から引き上げられるという、通常の年とは異なる事情があります。
次のアクションとして、次の点を確認しておくとスムーズです。
- 勤務先から配られた申告書一式(扶養控除等申告書・基礎控除申告書等・保険料控除申告書)を確認する
- 家族の令和8年中の所得見込みを、収入額ではなく所得ベースで確認する
- 令和8年11月までの基準(58万円・123万円等)と12月以降の基準(62万円・136万円等)のどちらに該当するかを確認する
- 新たに扶養親族等に該当しそうな家族がいる場合は、年末調整の締め切り前に勤務先へ相談する
- 令和8年分・令和9年分のどちらの申告書かを確認してから記入する
制度の詳細や記載例は年によって変わることがあります。最新情報は国税庁で必ずご確認ください。
参考資料
(確認日:2026年9月28日/一部訂正:2026年10月14日)
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