「老後資金を作りたいけれど、iDeCoとつみたてNISAのどっちがいいの?」「両方やった方がいい?」と迷う方は多いのではないでしょうか。どちらも国が用意した税制優遇のある資産形成制度ですが、目的や使い方が異なります。
この記事では、両制度の違いと選び方のポイントを初心者向けに整理しました。
この記事でわかること
- iDeCoとつみたてNISA(つみたて投資枠)の基本的な違い
- それぞれの税制メリット
- 拠出限度額と引き出しやすさの違い
- どんな人に向いているか
- よくある質問(FAQ)
まず結論
両制度を比較すると次のようになります。
| 項目 | iDeCo | つみたて投資枠(NISA) |
|---|---|---|
| 制度の性格 | 私的年金(老後資金専用) | 一般的な資産運用 |
| 掛金(投資額)の所得控除 | あり(全額所得控除) | なし |
| 運用益の非課税 | あり | あり |
| 受取時の税制 | 退職所得控除・公的年金等控除 | 非課税で引き出し |
| 引き出し可能時期 | 原則60歳以降 | いつでも可能 |
| 年間拠出上限 | 職業により14.4万〜81.6万円 | 年間120万円(つみたて投資枠) |
| 加入年齢 | 原則20〜65歳未満 | 18歳以上 |
| 口座管理手数料 | あり(金融機関により異なる) | 原則なし |
ざっくり言うと、iDeCoは「老後専用・税制メリット最大」、**つみたて投資枠は「いつでも引き出せる柔軟さ」**が特徴です。
iDeCoとは
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を出して運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金制度です。
税制メリット
- 拠出時:掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
- 運用中:運用益が非課税
- 受取時:退職所得控除または公的年金等控除が使える
拠出限度額(月額・2024年12月改正後の現行額)
| 区分 | 上限(月額) | 年額の目安 |
|---|---|---|
| 自営業など(第1号被保険者) | 月68,000円※ | 年81.6万円 |
| 会社員(企業年金なし) | 月23,000円 | 年27.6万円 |
| 会社員(企業型DCのみ) | 月20,000円 | 年24万円 |
| 会社員(確定給付企業年金=DBあり) | 月20,000円 | 年24万円 |
| 公務員 | 月20,000円 | 年24万円 |
| 専業主婦(夫)等(第3号被保険者) | 月23,000円 | 年27.6万円 |
※第1号被保険者の68,000円は、国民年金基金の掛金や付加保険料との合算枠です。 ※企業型DCやDBがある会社員・公務員は、企業の年金掛金との合算上限(事業主掛金を含め月55,000円または62,000円)の範囲内という条件もあります。
2024年12月の制度改正で、これまで月12,000円だった公務員やDBのある会社員の上限が月20,000円に引き上げられました。さらに、企業型DCとiDeCoを併用する場合の合算上限が月55,000円から月62,000円に拡大されています。なお、自営業者の上限を月75,000円に、会社員等の上限をさらに引き上げる改正が今後予定されていますが、施行は将来(2027年1月予定)とされています。最新の限度額はiDeCo公式サイト・厚生労働省でご確認ください。
注意点
- 原則60歳まで引き出せない
- 加入時・運用中に手数料がかかる
- 受取方法(年金 or 一時金)で税負担が変わる
iDeCoの節税額はいくら?計算式とケース別試算
iDeCoの掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になります。節税額のおおよその考え方は次のとおりです。
年間の節税額(目安) = 年間の掛金 ×(所得税率 + 住民税率10%)
所得税率は課税所得に応じて5%〜45%の段階(超過累進)で、住民税は所得割が一律約10%です。下の試算は目安であり、実際の税額は他の所得控除・端数処理・自治体で変わります。正確な額は勤務先の年末調整や確定申告、税理士にご確認ください。
ケース1:会社員(企業年金なし)・月23,000円拠出
- 年間の掛金:23,000円 × 12か月 = 276,000円
- 仮に課税所得が195万〜330万円の帯(所得税率10%)の場合:276,000円 ×(10% + 10%)= 約55,200円/年
- これを20年続けると、掛金の所得控除による節税の累計は目安で約110万円(税率が変わらないと仮定した概算)
ケース2:会社員・月20,000円拠出(所得税率20%の帯)
- 年間の掛金:20,000円 × 12か月 = 240,000円
- 課税所得が330万〜695万円の帯(所得税率20%)の場合:240,000円 ×(20% + 10%)= 約72,000円/年
- 所得が高い(税率が高い)ほど、同じ掛金でも節税額は大きくなります
ケース3:自営業・月30,000円拠出(所得税率10%の帯)
- 年間の掛金:30,000円 × 12か月 = 360,000円
- 360,000円 ×(10% + 10%)= 約72,000円/年
- 自営業は上限が月68,000円と大きく、掛金を増やすほど控除枠を活かせます
ケース4:収入のない専業主婦(夫)
- そもそも納める所得税・住民税が少ない(またはない)ため、所得控除の節税メリットはほとんど受けられません
- この場合は、いつでも引き出せて運用益が非課税になるNISAの方が使い勝手がよい、という考え方もあります
試算からわかるポイント
- 節税額は「掛金 ×(所得税率+住民税率)」でざっくり計算できる
- 所得が高い人ほど節税効果が大きい
- 所得税・住民税をあまり払っていない人は、所得控除の恩恵が小さい
- iDeCoには口座管理手数料がかかるため、節税額と手数料を見比べることも大切
実際にいくらになるか(計算してみる)
上のケース別試算を、掛金と税率の組み合わせで一覧にすると次のようになります。節税額の目安は「年間の掛金 ×(所得税率+住民税の所得割10%)」です。所得税の税率は課税所得に応じて5〜45%の超過累進、住民税の所得割は標準税率10%と定められています。
| 年間の掛金 | 所得税率5% | 所得税率10% | 所得税率20% | 所得税率23% |
|---|---|---|---|---|
| 14.4万円(月1.2万円) | 約2.2万円 | 約2.9万円 | 約4.3万円 | 約4.8万円 |
| 24万円(月2万円) | 約3.6万円 | 約4.8万円 | 約7.2万円 | 約7.9万円 |
| 27.6万円(月2.3万円) | 約4.1万円 | 約5.5万円 | 約8.3万円 | 約9.1万円 |
| 81.6万円(月6.8万円) | 約12.2万円 | 約16.3万円 | 約24.5万円 | 約26.9万円 |
たとえば会社員(企業年金なし)で月2.3万円を拠出し、所得税率10%にあたる方であれば、年およそ5.5万円が目安になります。
ここで誤解されやすいのが、この金額がまとめて現金で振り込まれるわけではないという点と、所得税と住民税で戻り方がまったく違うという点です。上の例(年27.6万円拠出・所得税率10%)で分解すると次のようになります。
- 所得税分(27,600円):年末調整または確定申告で、その年のうちに還付されます
- 住民税分(27,600円):還付ではなく、翌年6月から1年かけて毎月の天引き額が少なくなる形で反映されます(月あたり約2,300円)
「iDeCoの節税を実感できない」と感じる原因の多くは、節税額の半分前後を占める住民税側の効果が、翌年度に、しかも毎月の給与へ薄く分散して現れるためです。所得税率が5%の方の場合、節税額の3分の2は住民税側で戻ってくる計算になります。
もうひとつ押さえておきたいのが、この節税額は運用益が非課税になる効果とは別のものという点です。掛金の所得控除は「今払う税金が軽くなる」効果、運用益非課税は「増えた分に課税されない」効果で、性質が異なります。どちらも運用の結果を保証するものではなく、iDeCoは投資であるため元本割れの可能性があります。
また、iDeCoには加入時手数料と毎月の口座管理手数料がかかります。掛金が少なく税率も低い場合、節税額と手数料が近い水準になることもあるため、金融機関を選ぶ際は両方を見比べることが大切です。
上の表は目安です。実際の税率は課税所得(他の所得控除を差し引いた後の金額)で決まり、住民税の税率・調整控除の扱いは自治体によって異なる場合があります。正確な金額は勤務先の年末調整、税務署、税理士にご確認ください。
つみたて投資枠(NISA)とは
2024年から始まった新NISAの「つみたて投資枠」は、長期・積立・分散投資に適した投資信託を積立で買える非課税口座です。
制度のポイント
- 年間投資上限:120万円(つみたて投資枠)
- 別途「成長投資枠」が年240万円あり、合計で年360万円まで投資可能
- 生涯非課税保有限度額:1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)
- 運用益・配当・分配金が非課税
- いつでも引き出し可能
- 売却すると非課税枠の「簿価」分が翌年復活する
対象商品(つみたて投資枠)
金融庁が定める基準を満たす投資信託・ETFに限定されています。長期・積立・分散投資に適した低コスト商品が選ばれています。
注意点
- 掛金の所得控除はない
- 元本保証ではない(投資なので値動きあり)
- 損失が出ても、課税口座との損益通算はできない
どちらが自分に合うか
選び方の目安を整理します。
iDeCoが向いている人
- 老後資金専用に強制的に積み立てたい
- 所得税・住民税を払っており、所得控除のメリットが大きい
- 60歳まで引き出さなくても生活に困らない
- 自営業(拠出上限が大きく税効果も大きい)
つみたて投資枠(NISA)が向いている人
- 老後資金以外の目的でも使う可能性がある(教育費・住宅資金など)
- 流動性を確保したい
- 所得が少なく所得控除のメリットが小さい人(学生・専業主婦等)
- まず投資に慣れたい初心者
両方使うのも有効
両制度は併用可能です。一般的に「先にNISAで流動性を確保、余力があればiDeCoで老後専用枠を活用」という考え方もあります。ただし、家計や目的によって優先順位は変わります。
始め方の流れ
iDeCo
- 金融機関(運営管理機関)を選ぶ
- 加入申出書を提出(勤務先の証明が必要な場合あり)
- 掛金額・運用商品を選ぶ
- 毎月の掛金が引き落とされ運用が始まる
つみたて投資枠(NISA)
- 金融機関でNISA口座を開設
- つみたて投資枠で買付する投資信託を選ぶ
- 毎月の積立額・引き落とし日を設定
- 自動で積立が継続
口座開設には本人確認書類・マイナンバー確認書類が必要です。
始める前のチェックリスト
- 当面使う予定のない余裕資金の範囲か(iDeCoは原則60歳まで引き出せない)
- iDeCoは自分の職業区分の拠出上限を確認(会社員は勤務先の証明=事業主証明が必要な場合あり)
- 企業型DC加入者は、規約でiDeCo併用が認められているか勤務先に確認
- 所得税・住民税を納めているか(納めていないと所得控除のメリットは小さい)
- 金融機関ごとの口座管理手数料と取扱商品を比較
- NISAは年間の投資上限(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)と生涯枠1,800万円を把握
- 毎月の積立額は無理のない範囲に設定(あとから変更・休止もできる)
- iDeCoの掛金は年末調整(または確定申告)で小規模企業共済等掛金控除として申告する
注意点
- 投資には元本割れリスクがあります
- 制度内容は今後も変更される可能性があるため最新情報を確認しましょう
- 手数料・運用商品は金融機関で異なるため比較検討を
- 税制メリットの大きさは所得や家族構成で変わります
- 個別の判断は税理士・ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください
- 本サイトは公的機関ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください
よくある質問(FAQ)
Q1. iDeCoとつみたてNISA、どちらを優先すべき? A. 一概には言えませんが、流動性を重視するならNISA優先、所得控除のメリットを最大化したいならiDeCo優先という考え方があります。家計状況により判断しましょう。
Q2. 両方やってもいいですか? A. はい、併用可能です。それぞれ別の制度なので、両方の非課税メリットを受けられます。
Q3. iDeCoの掛金は途中で変更できますか? A. 年1回まで変更可能です。最低5,000円から1,000円単位で設定できます。掛金の停止(休止)もできます。
Q4. NISAの非課税枠を使い切ったらどうなりますか? A. 売却すれば翌年に簿価分の枠が復活します。生涯非課税限度額(1,800万円)の範囲内で繰り返し利用可能です。
Q5. 専業主婦(夫)でもiDeCoに加入できますか? A. 第3号被保険者として月23,000円まで加入できます。ただし所得がない場合は所得控除のメリットが受けられないため、税効果は限定的です。
Q6. iDeCoの節税額はどうやって計算しますか? A. おおよそ「年間の掛金 ×(所得税率+住民税率10%)」で目安が出せます。たとえば所得税率10%の人が年27.6万円拠出すると、27.6万円×20%=約5.5万円が年間の節税額の目安です。所得が高いほど効果は大きくなります。正確な額は年末調整・確定申告でご確認ください。
Q7. iDeCoの掛金は年末調整で申告できますか? A. 会社員は、保険会社ではなく国民年金基金連合会から届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を勤務先に提出し、年末調整で控除を受けられます。給与天引きにしている場合は手続きが不要なこともあります。自営業の方は確定申告で申告します。
Q8. iDeCoの口座管理手数料はどのくらいかかりますか? A. 加入時手数料(国民年金基金連合会へ初回のみ)と、毎月の口座管理手数料がかかります。毎月の手数料は金融機関により差があるため、節税額と手数料を見比べて金融機関を選ぶことが大切です。具体額は各金融機関の案内でご確認ください。
Q9. 受け取るときに税金はかかりますか? A. iDeCoは拠出時・運用時が優遇される一方、受取時は課税対象になります。ただし一時金で受け取れば退職所得控除、年金で受け取れば公的年金等控除が使えます。受取方法や他の退職金との兼ね合いで税負担が変わるため、受取が近づいたら確認しておくと安心です。
Q10. つみたてNISAだけ・iDeCoだけ、片方でもいいですか? A. 問題ありません。引き出しやすさを重視するならNISAだけ、所得控除を最大限活かしたいならiDeCoを組み合わせる、という選び方ができます。家計や目的に合わせて無理のない範囲で始めましょう。
まとめ
- iDeCoは老後専用・所得控除あり、原則60歳まで引き出し不可
- つみたて投資枠(NISA)はいつでも引き出し可・所得控除なし、運用益非課税
- どちらも併用可能
- 自分の年齢・所得・資金目的に応じて使い分けを
- 投資にはリスクがあるため自己責任で判断
- 最新情報は厚生労働省「確定拠出年金制度」と金融庁「NISA特設ウェブサイト」で必ずご確認ください
両制度はどちらも国が後押しする資産形成のしくみです。ご自身のライフプランや資金目的を整理して、無理のない範囲で活用を検討してみてください。
参考資料
最終確認日
最終確認日: 2026-07-17
制度や税制は改正されることがあります。実際に手続きをする前に、本文中の公式リンクや自治体・関係機関の最新情報をご確認ください。